FAK/HDAC5シグナルは骨細胞機械的刺激シグナル伝達を制御する
著者: | Sato T, Verma S, Andrade CDC, et al. |
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雑誌: | Nat Commun. 2020, 11: 3282. |
- スクレロスチン
- FAK
- 骨細胞
論文サマリー
骨細胞は骨の中に存在する骨格の主要なメカノセンサーとして機能し、骨細管に伸ばした樹状突起により流体せん断応力(FFSS)の変化を機械的刺激として感知する。機械的負荷による骨細胞のSost発現減少は新たな骨形成を活性化するが、骨細胞の機械的刺激シグナル伝達からSost発現抑制に至る分子機構は不明であった。本研究で著者らはクラスIIaヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC4とHDAC5の欠損マウスを用い、これらの分子が機械的負荷誘導性のSost発現抑制と骨形成誘導に必要であることを明らかにした。骨細胞様細胞株Ocy454のFFSS刺激後RNA-seq解析等からFAKに着目し、FFSSシグナル伝達が、細胞内局在を制御するHDAC5チロシン642のFAKによる直接的なリン酸化を含むシグナル伝達経路を介して、HDAC4/5の核局在を促進することを示した。また、FAKを薬理学的に阻害するとin vitroおよびin vivoでのSost mRNA発現が低下した。さらに、環状RGDペプチドであるCilengitideを用いてインテグリンを阻害すると、FFSSシグナルと同様にFAK活性が低下し、HDAC4/5依存的なSost発現低下が誘導された。これらの結果から、骨細胞機械的シグナル伝達を標的とした骨形成促進薬の候補が示唆された。
推薦者コメント
これまで、2.3 kb Col1a1-CreによるFAK欠損マウスの結果から、FAKは機械的刺激に伴う骨形成には重要ではないとされてきたが(Castillo AB et al., PLOS ONE, 2012, 7: e43291)、本論文によりFFSSに伴うSost発現低下に関わることが明らかにされた。(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野・林 幹人)