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PD-1ブロックによるマウスの破骨細胞形成抑制と骨癌性疼痛の緩和

PD-1 blockade inhibits osteoclast formation and murine bone cancer pain
著者:Wang K, Gu Y, Liao Y, et al
雑誌:J Clin Invest. 2020; 130. 3603–3620.
  • PD-1
  • 破骨細胞形成
  • 骨破壊と癌性疼痛

論文サマリー

 ニボルマブ(抗PD-1モノクローナル抗体)を含む免疫療法では腫瘍の抑制効果が認められる.末期がん患者ではがんの骨転移や骨破壊により癌性疼痛が惹起されるが,PD-1シグナルブロックが骨の癌性疼痛に与える影響は不明である.本研究では,Pdcd1遺伝子欠損マウス(Pd1-/-)にルイス肺がん細胞を大腿骨播種し実験を行った.野生型(WT)マウスと比較してPd1-/-マウスでは疼痛感受性が増大していたが,骨の癌性疼痛は抑制されていた.Pd1-/-マウスにおけるこの現象は,WTマウスに対するニボルマブの繰り返し静脈注射により再現可能だった.腫瘍細胞が産生するPD-L1はJNK活性化とCCL2産生を介して破骨細胞形成を促進していたが,PD-1欠損やニボルマブ投与では,腫瘍量を変化させずに破骨細胞形成を阻害した.また,骨のがんでは一次感覚神経のCCR2発現が亢進していたが,CCR2をブロックすることで,効果的に骨の癌性疼痛が抑制されることも分かった.

推薦者コメント

 本研究では,投与されたPD-1抗体(ニボルマブ)により破骨細胞形成が抑制され,骨破壊抑制や癌性疼痛緩和に長期的なベネフィットをもたらす可能性が示されたが,鍵となる細胞は,PD-1陽性単球-マクロファージ細胞系であり,免疫動態制御や腫瘍動態制御機構に幅広く重要な役割を果たしていると思われた.さらに研究が進み,骨の癌性疼痛を効率よく制御できる治療プロトコルが作成されることを期待する.(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)