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活性化した骨格系幹細胞による関節軟骨の再生

Articular cartilage regeneration by activated skeletal stem cells
著者:Murphy MP, Koepke LS, Lopez MT, et al
雑誌:Nat. Med. 2020; 26. 1583–1592.
  • 関節軟骨
  • 再生
  • 骨格系幹細胞

論文サマリー

 変形性関節症(OA)は,関節軟骨の不可逆的・進行的破壊を特徴とする疾患である.OAの病因は複雑で,遺伝的要因,急性炎症ならびに慢性炎症などを含む様々な要因が関与する.本研究では,軟骨を再生する常在型骨格系幹細胞(SSC)の加齢に伴う能力の変化に加え,OAの進行に寄与する可能性がある因子について検索を行った.その結果,マウスとヒトの両者において,SSCの段階的減少や,関節部における軟骨形成の減少は加齢と関連していることが分かった.しかしながら,微小骨折(MF)手術を行って再生能を刺激することにより,成体マウス肢関節の軟骨表面では局所的なSSCの活性化が認められた.MFにより活性化したSSCでは線維性組織を形成する傾向があったが,BMP2と可溶性VEGFR1をハイドロゲルに混合してMFと併用すると,SSCは関節軟骨を形成することが分かった.

推薦者コメント

 本研究結果から,OAでは,MFにBMP-2と可溶性VEGFR1の局所投与を組み合わせることで,常在型のSSCに軟骨再生能力を獲得させることができることが分かった.したがって将来的には,諸外国で認可されているBMP-2とベバシズマブなどを利用することで,患者のOAに対して関節軟骨を再生できる可能性が考えられ,さらなる研究を展開することで,副反応のない安全な治療法が確立されるかもしれない.(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)