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リンゴ酸酵素がミトコンドリアと骨芽細胞における好気的解糖を結びつける

Malic Enzyme Couples Mitochondria with Aerobic Glycolysis in Osteoblasts
著者:Lee WC, Ji X, Long F et al
雑誌:Cell Rep. 2020;32(10):108108.
  • 骨芽細胞
  • TCAサイクル
  • 代謝トレーシング

論文サマリー

 骨芽細胞の代謝プログラムは未だ完全には解明されていない。本研究で筆者らは、好気的条件下での骨芽細胞分化過程において、グルコース消費と乳酸産生の著しい増加が起こるとともに、酸素消費は減少することを明らかにした。マウスのin vivoグルコーストレーシングにより、皮質骨中のグルコースはクエン酸回路において有機酸ではなく乳酸に代謝されることが示された。また、培養骨芽細胞のグルコーストレーシングにより、ピルビン酸がカルボキシル化され、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルに不可欠なリンゴ酸が形成されることが明らかになった。さらにRNA-seq解析により、リンゴ酸酵素をコードするMe2が骨芽細胞の分化過程で特異的に増加することが示された。 Me2のノックダウンは解糖系の流れを著しく減少させ、骨芽細胞の増殖と分化を抑制した。したがって、リンゴ酸酵素は骨芽細胞の分化とそれに伴う好気的解糖に重要な因子であると示唆された。

推薦者コメント

 本研究により、好気的解糖が骨芽細胞の主要なエネルギー代謝経路である可能性が示唆された。骨芽細胞の好気的解糖が細胞の分化成熟化を制御することを示しており、これらの結果は、糖尿病などの病的なエネルギー代謝状態における骨形成低下メカニズムの解明だけでなく、骨代謝疾患に対するあらたな治療標的の探索に寄与することが期待される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・家崎 高志、檜井 栄一)