日本骨代謝学会

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骨髄脂肪組織はグルコース恒常性において特有の役割を持った特殊な脂肪サブタイプである

Bone marrow adipose tissue is a unique adipose subtype with distinct roles in glucose homeostasis
著者:Suchacki KJ, Tavares AAS, Cawthorn WP et al
雑誌:Nat Commun. 2020; 11(1):3097.
  • 骨髄脂肪組織
  • グルコース代謝
  • 脂肪サブタイプ

論文サマリー

 骨髄脂肪組織(BMAT)は総脂肪量の10%以上を占めるが、白色・褐色脂肪組織(WAT、BAT)とは異なりその代謝機能は不明であった。この論文で筆者らは、トランスクリプトーム解析により、BMATはWATやBATと比較してグルコース取り込み能が高く、インスリン反応性が低いことを明らかにした。また、BMATがインスリンや低温刺激によるグルコース取り込み増加に抵抗性を示し、BMATがWATやBATとは機能的に異なることを示した。また、ヒトのBMAT基礎グルコース取り込みは中軸骨または皮下WATよりも高く、BMATが全身のグルコース恒常性に重要な役割を担う可能性が示唆された。これらの研究結果により、BMATが他の脂肪組織とは別の主要な脂肪組織サブタイプであることが明らかとなり、BMAT分析の新たな手法が確立された。

推薦者コメント

 BMATのエネルギー代謝は造血幹細胞の機能に重要であるだけでなく、血液腫瘍の発症・進展にも関与することが報告されており (Shafat, M. S. et al. Blood 2017; 129, 1320–1332.) 注目が高まっている。本研究によって、BMATの骨髄環境における役割や全身における役割の解明がさらに進むことが期待される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・家崎 高志、檜井 栄一)