日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 溝口 利英

RUNX2を安定化する経路は生理的および病理的な骨形成を調節する

A RUNX2 stabilization pathway mediates physiologic and pathologic bone formation.
著者:Kim JM, Yang YS, Park KH, et al
雑誌:Nat Commun. 2020; 11(1):2289.
  • 骨芽細胞
  • Runx2
  • ユビキチン・プロテアソーム系

論文サマリー

 骨芽細胞分化のマスター転写因子であるRunx2のタンパクレベルでの調節メカニズムについては不明な点が多く、この過程が骨芽細胞分化に及ぼす影響についても良くわかっていない。今回、セリン・スレオニンキナーゼの一種であるcasein kinase 2 (CK2)が、Runx2タンパク質の安定化を介して骨芽細胞分化を正に調節することが示された。すなわち、CK2を介したRunx2のリン酸化は、脱ユビキチン化酵素であるherpesvirus-associated ubiquitin-specific protease (HAUSP)をリクルートする。その結果、Runx2はユビキチン・プロテアソーム系による分解から解除され、タンパク質レベルが上昇する。以上の過程は、未分化な骨髄間葉系幹細胞における骨芽細胞へのコミットメントおよびそれに引き続く分化成熟過程に必要である。また、CK2/HAUSP/RUNX2経路は異所性骨化の発症にも関与する。

推薦者コメント

 Runx2のCK2によるリン酸化部位を同定し、これを活用してHAUSPのRunx2に対する特異性を見出した丁寧な仕事である。さらに、CK2およびHAUSPの全身性欠損マウス、そして骨髄間葉系細胞で特異的に欠損させたマウスを用いた解析により、CK2/HAUSP/RUNX2経路のin vivoにおける骨形成に対する重要性も証明している。CK2/HAUSP/RUNX2経路は、骨の発生および異所性骨化の発症時に顕著な上昇が認められるが、この過程におけるCK2の誘導機構、そして骨リモデリングに対する必要性についても興味深い。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)