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筋組織由来のインターロイキン6が骨芽細胞を介して運動能力を高める

Muscle-derived interleukin 6 increases exercise capacity by signaling in osteoblasts.
著者:Chowdhury S, Schulz L, Palmisano B, et al
雑誌:J Clin Invest. 2020; 130(6):2888.
  • IL-6
  • 骨格筋
  • 骨芽細胞

論文サマリー

 運動時に生体内で誘導されるIL-6が運動機能の向上に寄与することが示唆されている。これまで著者らは、低カルボキシル化状態のオステオカルシン(ucOCN)が、 (1) 運動により生体内で上昇し、筋組織の受容体GPRC6Aを介してIL-6産生を正に調節すること、(2) 筋組織のグルコースおよび脂肪酸の取り込みと代謝を向上させ、持久力を高めることを報告した (Cell Metab. 2016; 23:1078.)。今回の論文では、運動時に上昇するIL-6の大部分が筋組織に由来することを、筋特異的にIL-6を欠損させたマウスを用いて証明した。また、IL-6による持久力の向上作用の大部分は骨芽細胞を介して発現することを示した。すなわち、IL-6は骨芽細胞のRANKL/OPG比の上昇を介して破骨細胞によるucOCNの産生を促し、それが筋機能を向上する。

推薦者コメント

 著者らは、筋組織以外の臓器においてもucOCNがホルモンとして作用し、組織恒常性の維持に働くことを報告してきた。一連の発見は、著者らが作製したOCN欠損マウスから得られた所見に基づいているが、近年2つの研究グループでOCN欠損マウスが新たに作製され、その表現型が報告された (PLos Genet. 2020, 16 (5): e1008586; PLos Genet. 2020, 16(5): e1008361)。興味深いことに、これらの欠損マウスではOCNのホルモンとしての機能を示す所見は認められておらず、今後の展開が注目される。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)