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マウス皮質骨の成熟は骨細胞におけるSOCS3によるgp130/STAT3シグナル伝達の抑制を必要とする

Cortical bone maturation in mice requires SOCS3 suppression of gp130/STAT3 signalling in osteocytes
著者:Walker EC, Truong K, McGregor NE, et al.
雑誌:Elife. 2020; 9: e56666
  • FGF23
  • グリセロール3-リン酸
  • 急性腎障害

論文サマリー

 骨強度は皮質骨の緻密な外郭構造によって規定されるが,その形成機序の詳細は明らかでない。著者らは,皮質骨の成熟が遅延する骨細胞特異的SOCS3排除マウス(Dmp1Cre:Socs3f/fマウス)を用いて,皮質骨の成熟に関わるシグナルを探索した。皮質骨の成熟には,骨多孔性の低下と低密度骨から高密度骨への移行が必要であったが,Dmp1Cre:Socs3f/fマウスではこれらのプロセスが遅延していた。Dmp1Cre:Socs3f/fマウスの骨では,IL-6ファミリーサイトカインであるgp130のシグナル伝達に応答したSTAT3リン酸化が持続的に観察された。Dmp1Cre:Socs3f/fマウスにおいて骨細胞特異的にgp130をさらに排除すると,骨細胞におけるSTAT3リン酸化と皮質骨における破骨細胞性骨吸収は抑制され,皮質骨の成熟障害が改善し,骨強度の低下が回復した。以上の結果より,皮質骨は微細孔の閉鎖と高密度骨の蓄積によって発達するものであり,これらの過程は骨細胞のgp130-STAT3シグナル伝達の抑制を必要とすることが明らかとなった。

推薦者コメント

 皮質骨は成長とともに緻密で硬度の高い組織に成熟するが,その詳細はこれまで明らかでなかった。今回の研究により,皮質骨成熟の過程が明らかとなり,さらに骨細胞におけるgp130-STAT3シグナル伝達が皮質骨における破骨細胞の制御に関与していることが示された。皮質骨の多孔化は脆弱性骨折に直結するが,既存の骨粗鬆症薬は海綿骨への効果が主体であり,皮質骨への効果は限定的である。今後,gp130-STAT3を標的とすることにより皮質骨の強度を向上させる治療薬の開発につながるか注目される。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)