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ピエゾ1/2は、協調したNFAT-YAP1-β-cateninの活性化を通じて骨形成に必須な機械的シグナル伝達を仲介する

Piezo1/2 mediate mechanotransduction essential for bone formation through concerted activation of NFAT-YAP1-β-catenin
著者:Zhou T, Gao B, Fan Y, et al
雑誌:eLife 2020; 9: e52779
  • 骨形成
  • ピエゾ1/2
  • シグナル伝達

論文サマリー

 機械的負荷によるシグナル伝達の分子機構は未解明である。本論文は、骨の発達と骨芽細胞分化に必要なメカノセンサーとして、Piezo1とPiezo2を同定した。間葉細胞あるいは骨芽細胞前駆細胞でのPiezo1欠損は、骨芽細胞分化不全と骨吸収増加により、新生児マウスに複数の自然骨折を引き起こした。さらに、Piezo1 / 2欠損は骨発達過程および成長後における筋力低下によって誘導される骨喪失に抵抗性を示した。Piezo1 / 2は、流体せん断応力と細胞外基質の硬さによって細胞内にCa2 +流入させ、カルシニューリンを活性化した。それにより、NFATc1、YAP1、およびβ-カテニンの複合体形成と、それらの脱リン酸化によって協調的に複合体の転写が活性化された。 Piezo1欠損とPiezo1 / 2欠損はYap1とβ-カテニンの活性化を低下させた。Piezo1 / 2欠損で認められる自然骨折や骨の短小化は、β-カテニンシグナルの活性薬であるBIOの投与によって部分的に救済された。

推薦者コメント

 これまでの報告では、骨細胞のメカノセンサーとしてPiezo1/2の重要性が示されている。本論文では、骨の発達および骨芽細胞の分化過程において、Piezo1/2が力学負荷や細胞外基質からの刺激を伝えることが明らかになった。Piezo1/2によるCaイオンの流入がNFATc1、YAP1、およびβ-カテニンの複合体を活性化する点が興味深い。この複合体がどのような遺伝子発現を誘導するか、今後の研究の進展を期待したい。(松本歯科大学総合歯科医学研究所・小林 泰浩)