Gli1陽性歯根膜幹細胞は骨細胞と咬合力によって制御される
Gli1+ Periodontium Stem Cells Are Regulated by Osteocytes and Occlusal Force
著者: | Men Y, Wang Y, Yi Y, et al |
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雑誌: | Dev Cell 2020; 54: 1-16 |
- 歯根膜幹細胞
- 咬合力
- スクレロスチン
論文サマリー
歯は歯周靭帯(PDL)によって歯槽骨に付着する。本論文は、成体マウス臼歯PDL中のGli1 +細胞を、PDL、歯槽骨、およびセメント質に分化する多能性幹細胞(PDLSC)として同定した。Gli1 + PDLSCは神経血管束に局在し、特に歯根の先端に多く存在した。歯槽骨の骨細胞は、Wnt阻害剤であるスクレロスチンを介して分泌し、Gli1 + PDLSCs活性を負に調節した。スクレロスチンを欠損させたマウスでは、PDLSCsのPDL細胞、セメント芽細胞への分化を促進させた。咬合力を減らしたマウスでは、スクレロスチン発現が増加し、PDLSCの活性化を阻害した。生理学的咬合力は、骨細胞によるスクレロスチンの発現を抑制しWntシグナルを増加させることで、間接的にPDLSCによるPDL、セメント質、歯槽骨の形成を促進する。
推薦者コメント
著者らは、以前Gli1陽性細胞が切歯、頭蓋骨、長管骨の幹細胞であることを提唱している。今回、歯根の先端に局在するGli1 + PDLSCが歯の形成が終わった後も、歯周組織(歯根膜、歯槽骨、セメント質)の供給源になることを示した。特に、Gli1 + PDLSCの歯周組織への分化には、Wntシグナルが重要であり、噛むときに発生する咬合力が歯槽骨のスクレロスチン発現を低下させることでWntシグナルの活性が調節される点は、非常に興味深い。Wntの種類やそのソースがどの細胞か、今後の展開が楽しみである。(松本歯科大学総合歯科医学研究所・小林 泰浩)