ヒト破骨細胞-骨芽細胞のカップリング因子の同定と骨リモデリングとエネルギー代謝の連関の解明
Identification of osteoclast-osteoblast coupling factors in humans reveals links between bone and energy metabolism
著者: | Weivoda M, Chew C, Monroe D, et al |
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雑誌: | Nat Commun. 2020; 11: 87 |
- RANKLシグナル
- 骨代謝
- 糖代謝
論文サマリー
骨リモデリングは、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が協調的に働くことで行われる。また、このプロセスに関与する因子はカップリング因子として呼ばれる。筆者らは、デノスマブ (DMAb)の投与により破骨細胞が欠失した閉経後女性の骨生検を実施し、RNAシークエンス解析を行うことで、DMAbによって抑制される破骨細胞由来カップリング因子の同定を試みた。その結果、LIF、CREG2、CST3、CCBE1およびDPP4が候補因子として挙げられた。また、DMAb投与によるDPP4の減少は、血中グルカゴン様ペプチド-1の増加を促すことが明らかになった。加えて筆者らは、DMAbの投与は2型糖尿病患者において、HbA1cの有意な減少を誘導し糖代謝を改善させることを見出した。本研究により、破骨細胞由来DPP4が骨リモデリングとエネルギー代謝の連関を媒介している可能性が示された。
推薦者コメント
本研究により、ヒト骨リモデリングにおける新規カップリング因子が同定されると共に、RANKLシグナルによる骨代謝および糖代謝の制御メカニズムに新たなエビデンスが付与された。これまでに、DMAbが膵臓のβ細胞のRANKLシグナルを抑制することで糖代謝を改善することが報告されている (Kondegowda N. et al. Cell Metab. 2015; 22(1): 77-85)。骨代謝および糖代謝の双方におけるRANKLシグナルの重要性は今後ますます高まっていくことが予想される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・深澤 和也・檜井 栄一)