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動物の生体内における造血幹細胞および前駆細胞のライブイメージング

Live-animal imaging of native haematopoietic stem and progenitor cells
著者:Christodoulou C, Spencer JA, Yeh SCA. et al
雑誌:Nature. 2020; 578: 278-283
  • 造血幹細胞
  • ライブイメージング
  • ニッチ

論文サマリー

 これまで、生体内における造血幹細胞(HSCs)のtrackingは移植下で行われており、HSCsの正確な挙動を把握しているとは言い難いものであった。本論文において、著者らはLT-HSCs(長期的な自己複製能力を有するHSC:long-term HSCs)のサブセットのみをレポーターラベルしたマウスを作出し、頭蓋冠骨髄におけるイメージング解析を行った。マウス頭蓋冠骨髄において、LT-HSCsは、洞様毛細血管と骨内膜面の双方に近接して存在する一方、多能性前駆細胞(MPPs)は、骨内膜ではなく移行血管と関連して局在すると思われた。安定状態にあるLT-HSCsの運動性は限られる一方、活性化LT-HSCsは、その一部で運動性が上昇するとともに限局的に数が増加する。また、LT-HSCsの増加は、骨リモデリングが活発な骨髄腔では認められるものの、骨吸収活性が低い骨髄腔では見られない。以上より、骨髄における造血幹細胞nicheは骨代謝回転によって異なる様相を呈することが示唆された。

推薦者コメント

 骨髄内における造血幹細胞nicheは、骨内膜側の骨芽細胞や血管内皮細胞、細網細胞(CAR細胞)との間に形成されるとの報告がなされてきた。本論文では、ライブイメージングの手法を用いて造血幹細胞nicheと骨代謝回転の関連を明らかにしており、造血幹細胞nicheによる骨代謝調節の可能性について今後さらなる研究が期待される。(北海道大学歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)