破骨細胞を介した骨吸収は分泌型および膜結合型メタロプロテアーゼの代償性ネットワークによりコントロールされる
Osteoclast-mediated bone resorption is controlled by a compensatory network of secreted and membrane-tethered metalloproteinases
著者: | Zhu L, Tang Yi, Li XY, et al |
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雑誌: | Sci Trans Med. 2020; 12: eaaw6143. |
- 破骨細胞
- MMP9
- MMP14
論文サマリー
正常な骨成長や発生に加え,骨粗鬆症から骨転移のような病的状態において,破骨細胞は骨の無機質とタンパク性構造物の両者を再構築する。カテプシンKによって破骨細胞はタイプIコラーゲンの分解能を有するが,カテプシンK欠損マウスや変異体を有するヒトであっても,未解明のエフェクターによって骨改造とコラーゲンの分解が起こる事実がある。今回著者らは,破骨細胞において,分泌型MMP9と膜結合型MMP14の機能的に重複するネットワークで構成されるカテプシンK非依存性のコラーゲン分解システムの同定を試みた。Mmp9とMmp14のどちらかを欠損させても骨吸収は正常であったが,その両者を欠損させるとマウスとヒトの破骨細胞活性が抑制された。MmP9/MmP14ダブルノックアウトマウスにおいては,骨密度の著しい増大に加え,PTHや卵巣摘出による病的骨吸収に抵抗性を示すことが分かり,代償性ネットワークが構築されていることが示された。
推薦者コメント
本研究では,カテプシンKの欠損を伴う濃化異骨症患者やマウスが骨リモデリング活性を保持することに着目して研究を行い,カテプシンK非依存性に分泌型MMP9と膜結合型MMP14の両者を基軸として,破骨細胞がコラーゲン分解能を有していることが示された。著者らも述べているように,MMP9/MMP14を基軸とした新規治療戦略は,骨吸収性の疾患に対して有効な可能性が考えられた。(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)