JAK阻害は骨芽細胞の機能促進を誘導して定常状態での骨量増大および病的状態における骨吸収の寛解をもたらす
JAK Inhibition Increases Bone Mass in Steady-State Conditions and Ameliorates Pathological Bone Loss by Stimulating Osteoblast Function
著者: | Adam S, Simon N, Steffen U, et al |
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雑誌: | Sci Trans Med. 2020; 12: eaay4447. |
- ヤヌスキナーゼ(JAK)
- 関節リウマチ
- JAK阻害薬(JAKi)
論文サマリー
ヤヌスキナーゼ(JAK)を介したサイトカインシグナルは,関節リウマチ(RA)のような炎症性疾患に対する重要な治療ターゲットである。JAK阻害(JAKi)による免疫調節は明確にされているが,骨の恒常性への関与は不明である。著者らはマウスを用い,正常な状態,エストロゲン欠乏性骨吸収,ならびに炎症(関節炎)による骨吸収に対し,JAKiであるトファシチニブやバリシチニブが与える影響を評価した。3つのマウスモデルにおいて,JAKiは血清中のRANKL/OPG比を減少させたまま骨量を増大させていた。JAKiはオステオカルシンやWntシグナルを正に調節し,βカテニンを安定化することで骨芽細胞の機能を有意に増大させたが,破骨細胞には影響がなかった。ヒトRAにおいて,骨糜瀾が修復されることからも明らかなように,JAKiはヒトの骨組織においても同化作用をもたらしていた。
推薦者コメント
JAK阻害薬の国内承認と薬剤販売から数年が経過したが,本論文では,現在まで不明であったJAK阻害薬の骨組織に対する作用が検索され,主として骨芽細胞の機能亢進と骨量増大効果を有することが証明された.以上から,著者らも述べているように,JAK阻害薬は骨芽細胞機能と骨形成増大に対する新規治療ツールになりえると考えられるため,更なる研究に期待したい。(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)