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骨細胞ネットワークにおける小胞体を介するミトコンドリア輸送

Endoplasmic reticulum mediates mitochondrial transfer within the osteocyte dendritic network
著者:Gao J, Qin A, Liu D, et al.
雑誌:Sci Adv. 2019; 5: eaaw7215.
  • 小胞体
  • ミトコンドリア輸送
  • 骨細胞

論文サマリー

 ミトコンドリアは細胞内においてエネルギー産生の場となるだけでなく,近傍の細胞に輸送されることにより,組織傷害からの修復や化学療法に対する抵抗性にも関わる。骨細胞は樹状突起を伸ばしてネットワークを形成することから,ミトコンドリア輸送を研究する上で一つの実験モデルとなる。著者らは,骨細胞のミトコンドリア特異的に光変換蛍光タンパク質を発現するマウスの初代骨細胞,及び骨細胞様細胞株 MLO-Y4を用いて,ミトコンドリア輸送が樹状突起ネットワークを通じて行われていることを明らかにした。さらにストレス状態の骨細胞に,隣接する正常骨細胞からミトコンドリアが輸送され,代謝機能が回復することを見出した。これらの協調的なミトコンドリア輸送は,Mitofusin 2を介する小胞体とミトコンドリアの接着に依存していた。Mitofusin 2は加齢とともに低下し,これに伴い骨細胞ネットワークにおけるミトコンドリア輸送が障害されることも明らかにされた。

推薦者コメント

 骨細胞が樹状突起ネットワークを介して隣接する骨細胞に小胞体を用いてミトコンドリアを輸送することが証明された。細胞障害時に隣接する細胞がエネルギー代謝をサポートする機構と考えられる。骨細胞のミトコンドリア輸送は加齢により障害されることも示され,骨粗鬆症の病態への関与も考えられる。骨細胞は骨芽細胞,破骨細胞の機能を制御し,さまざま疾患にも関わることから,今後さらなる研究展開が期待される。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)