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運動は造血幹細胞・前駆細胞を調節することにより白血球産生と心血管系の炎症を抑制する

Exercise reduces inflammatory cell production and cardiovascular inflammation via instruction of hematopoietic progenitor cells
著者:Frodermann V, Rohde D, Courties G, et al.
雑誌:Nat Med. 2019; 25: 1761-1771
  • 運動
  • 炎症細胞
  • 造血前駆細胞

論文サマリー

 運動不足,慢性炎症,白血球増多は動脈硬化の要因となるが,運動習慣が白血球産生に及ぼす影響は明らかでない。本研究で著者らは,マウスにおいて運動が白血球産生を抑制することを示した。運動は動脈硬化を有するマウス,ヒトの白血球増多を防いだ一方,感染症や心筋梗塞に対する白血球増多は抑制しなかった。その機序として,運動は脂肪細胞のレプチン産生を抑制することにより,造血幹細胞を静止期に維持するニッチ因子の骨髄間質細胞による産生を増幅することが示された。Prrx1-creERT2により間葉系幹細胞特異的にレプチン受容体を排除したマウスでは,造血幹細胞・前駆細胞の増殖と白血球増多が軽減し,心血管系の炎症と心筋梗塞後の変化が緩和された。運動を中止すると速やかにレプチン産生は再上昇したが,白血球産生と造血幹細胞・前駆細胞におけるエピゲノム,遺伝子転写への影響は数週間にわたり持続した。以上より,運動は造血幹細胞・前駆細胞のニッチに作用することにより,白血球産生を抑制する。

推薦者コメント

 運動による心血管イベント抑制の新たな機序として,レプチン産生抑制を介して骨髄ニッチに作用し,白血球産生を抑制することが明らかとなった。慢性炎症は動脈硬化症のみならず,さまざまな疾患の基盤となる。運動は感染症に対する白血球増多は抑制しなかったことから,過剰な免疫反応のみを抑える効果が期待される。重症患者では運動が不可能な場合もあることから,本研究成果が標的治療の開発にもつながることを期待したい。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)