造血幹細胞は類洞血管ニッチにより老化から守られている
Haematopoietic stem cells in perisinusoidal niches are protected from ageing.
著者: | Sacma M, Pospiech J, Boqeska R, et al |
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雑誌: | Nat Cell Biol. 2019; 21(11):1309. |
- 造血幹細胞
- 老化
- ニッチ
論文サマリー
HSCを支持する骨髄微小環境(ニッチ)に対する、老化の影響は良くわかっていない。最も未分化なHSCは、低い増殖活性を特徴とする。著者らは、この特性を利用し、老齢マウスのHSC画分中でGFP標識を長期間保持する亜集団を特定した。このHSC亜集団は、若いHSCの特徴である、高い骨髄生着能および、極性化した細胞形態を示し、類洞血管ニッチに近接して局在した。他のHSCニッチとして、細動脈や巨核球が知られているが、類洞血管だけが、加齢にともなう形態および量的な変化が認められなかった。さらに、類洞血管ニッチではNotchリガンドであるJag2の高い発現が見られ、その抑制によりニッチのHSC支持能が低下した。5-FU誘導性の骨髄抑制を回復する能力は、加齢により低下する。これは、老齢マウスでは、骨髄抑制にともない低下したJag2の発現が回復しないことに起因することを示した。以上より、老化した骨髄では、類洞血管ニッチがJag2の発現を介してHSCを老化から保護すると結論した。
推薦者コメント
HSCと血管系との位置関係から、細動脈および類洞血管ニッチが提唱されているが、その機能的な相違点については未だ結論には至っていない。本論文では、老化した骨髄組織では、類洞血管がHSCニッチとして重要であると結論づけている。しかしながら、細動脈に沿って走行する交感神経系がHSCニッチの老化をプロテクトするとの報告もあり、今後のさらなる解明が待たれる (Nat Med 2019, 25:701)。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)