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TOP > Hot paper > 岡本 一男

腫瘍微小環境の違いがヘルパーT細胞分化の極性化と免疫チェックポイント療法に対する反応性を決定する

Differences in Tumor Microenvironment Dictate T Helper Lineage Polarization and Response to Immune Checkpoint Therapy.
著者:Jiao S, Subudhi SK, Aparicio A et al
雑誌:Cell. 2019; 179: 1177-1190
  • 骨転移
  • 破骨細胞
  • ヘルパーT細胞

論文サマリー

 免疫チェックポイント療法(ICT)は転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して一定の効果を示すものの、骨転移を有するmCRPC患者に対しては奏効率が低い。著者らは、骨転移を有するmCRPC患者の骨髄では、ICT後にTh1細胞ではなくTh17細胞が増加することを認めた。マウス前立腺がん細胞の皮下移植モデルでは、ICTにより腫瘍微小環境のTh1細胞が増加し、生存率が改善される。一方、骨内注入モデルではTh1細胞はほとんど検出されず、ICTでもTh17細胞が増加し、抗腫瘍免疫応答が誘導されない。骨髄ではがん細胞が破骨細胞による骨吸収を促進させる結果、骨基質のTGF-βが放出され、Th1細胞分化が抑制される。さらにICTと抗TGF-β抗体の併用により、Th1細胞とCD8 T細胞が増加し、骨内の腫瘍進展が抑えられた。以上より、破骨細胞を介した骨基質からのTGF-β放出が、ICTの低効果の要因であると示唆された。

推薦者コメント

 CyTOFやシングルセルTCRレパトア解析などの最先端オミクス解析を駆使することで、治療前後の腫瘍微小環境を網羅的に調べている。近年、他のがん骨転移でもICTと抗RANKL抗体の併用療法の有効性が報告されている。他の骨転移でもヘルパーT細胞の極性化現象が関わっているのか興味深い点である。ただしICTと抗TGF-β抗体の併用によるCD8 T細胞のクローン増殖の機序が明確ではないため、さらなる解析が待たれる。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)