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TOP > Hot paper > 岡本 一男

FoxM1により制御される新規の関節炎関連破骨細胞前駆マクロファージの同定

Identification of a novel arthritis-associated osteoclast precursor macrophage regulated by FoxM1.
著者:Hasegawa T, Kikuta J, Sudo T, et al
雑誌:Nat Immunol. 2019; 20: 1631-1643
  • 関節リウマチ
  • 破骨細胞
  • 炎症

論文サマリー

 骨髄の破骨細胞前駆細胞に関してはCD115+CD117+細胞などこれまでいくつか報告されてきたが、関節炎の骨病変部で形成される破骨細胞も同様の前駆細胞から生じるのかは不明であった。著者らは関節炎のマウスモデルの解析から、CX3CR1hiLy6CintF4/80+MHC-II+という特有のマクロファージ集団が、炎症滑膜における破骨細胞前駆細胞であることを明らかにした。AtoMと名付けられたこの細胞集団は、骨髄由来のLy6Chi単球が血流を循環し滑膜に移行した後、M-CSFに反応して発生する。またAtoMの制御因子として転写因子FoxM1を見出し、FoxM1がAtoMの破骨細胞分化能に重要である一方、生理的な骨代謝には関与しないことを明らかにした。さらに関節リウマチ患者の滑膜でも、マウスAtoMに相当する細胞群が存在することを示した。

推薦者コメント

 本論文は、マウスの関節組織からいわゆるbare areaに位置するパンヌスを精密に単離する手法の樹立から始まる。この精巧な手法により炎症滑膜特異的な細胞集団の同定に結びついたと考えられる。またAtoMはRANKL単独に比べて、RANKLとTNFの同時添加により破骨細胞分化が顕著に亢進するという性質を持っており、非常に興味深い。関節リウマチに限らず、他の様々な炎症性骨疾患においてもAtoMのような細胞が関与しているのかもしれない。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)