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機械的シグナルによるPiezo1の刺激は骨同化を促進する

Stimulation of Piezo1 by mechanical signals promotes bone anabolism.
著者:Li X, Han L, Nookaew I, et al.
雑誌:Elife. 2019 Oct 7;8. pii: e49631.
  • Piezo1
  • メカノセンシング
  • 骨細胞

論文サマリー

 運動などによる力学的負荷は骨芽細胞による骨形成を促進し、骨強度を上昇させるが、その詳しいメカニズムは不明であった。著者らはカルシウムチャネルのスクリーニングから、Piezo1が骨細胞におけるメカノセンシングに関わる可能性を検討した。Piezo1遺伝子をDmp1-Creにより欠損させると、骨におけるTnfsf11(RANKL遺伝子)発現上昇とWnt1発現低下を介して骨量と骨強度が顕著に減少し、脛骨軸方向負荷に対するアナボリックな応答性も低下した。また、特にWnt1の発現にはPiezo1によるYap1/Taz活性化が関わることが示された。さらに、野生型マウスへのPiezo1アゴニストYoda1投与によってWnt1の発現上昇などにより骨量が上昇し、機械的負荷と同様の効果が得られた。以上から、骨芽細胞系列で発現するPiezo1がメカノセンシングに関わる可能性が示された。

推薦者コメント

 Piezo1は様々な細胞におけるメカノセンシングに関わることが明らかにされており、骨構成細胞でも同様の経路の重要性が確認された。一方、Dmp1-Creは骨細胞・骨芽細胞だけでなく様々な組織での発現が報告されていることに注意が必要である。また、寝たきり等での骨量低下に対するPiezo1アゴニストを用いた治療法の可能性が示されたが、全身の骨細胞を一様にPiezo1アゴニストで刺激することが骨形態・構造にどのような影響を及ぼすのかなど、慎重な検討が必要であると考えられる。(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野・林 幹人)