メカニカルストレスは、p130Casを介したNF-κB活性低下によって骨恒常性に関与する
Mechanical regulation of bone homeostasis through p130Cas-mediated alleviation of NF-κB activity.
著者: | Miyazaki T, Zhao Z, Ichihara Y, et al |
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雑誌: | Sci Adv. 2019; 5(9):eaau7802. |
- メカニカルストレス
- p130Cas
- 骨細胞
論文サマリー
細胞の接着班には、メカノセンサー分子であるp130Casが局在し、メカニカルストレスを感知する。メカニカルストレスが骨恒常性を調節する分子メカニズムを明らかにする目的で、骨組織に加わるメカニカルストレスを除去すると、骨のメカノセンサーである骨細胞でp130Casが核内移行するとともに、NF-kB活性の低下が認められた。骨細胞特異的p130Cas欠損マウスでは、NF-kBを介したRANKL発現上昇と破骨細胞による骨吸収促進・骨量減少が認められた。さらに、培養骨細胞にせん断応力を加えてもp130Casの核内移行が生じたが、NF-kB活性とRANKL発現は低下していた。以上のことから、骨細胞のp130Casは、骨に加わる流動せん断応力を感知し、NF-kB活性・RANKL発現を調節することにより、骨恒常性に寄与すると考えられる。
推薦者コメント
骨組織に加わるメカニカルストレスは、骨量維持に重要な役割を果たしているが、骨組織がどのようにメカニカルストレスを感知し、骨恒常性を維持しているかは不明な点が多かった。本研究は、骨細胞が骨のメカニカルセンサーとして作用しており、p130Casを介して骨細胞のRANKL発現を調節することで、骨リモデリングを調節する可能性を示唆しており、今後の研究展開が期待される。(北海道大学歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)