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骨組織を介した急性ストレス反応の調節

Mediation of the Acute Stress Response by the Skeleton
著者:Berger JM, Singh P, Khrimian L, et al
雑誌:Cell Metab. 2019; 30: 1-13
  • オステオカルシン
  • 急性ストレス反応
  • グルタミン酸

論文サマリー

 生物は危機的状況に直面すると、心拍数上昇などの急性ストレス反応(ASR)を示す。ASRの誘導にはステロイド等のストレスホルモンが寄与しているとされていたが、作用発現までに時間がかかることなどから別の物質の関与が示唆されていた。著者らは危機的状況を再現したストレスをマウスに与えると、オステオカルシン(OCN)の血中濃度が急激に上昇することを示した。遺伝学的解析から、扁桃体に存在する神経細胞の活性化、および骨芽細胞へのグルタミン酸取り込みによるγ-カルボキシラーゼの不活性化がストレスによるOCN分泌に必要であることを見出した。また、電気生理学的手法を組み合わせた解析の結果、骨芽細胞由来のOCNが副交感神経系を抑制することでASRを誘導することを明らかにした。さらに、副腎摘出マウスにストレスを与えてもASRが引き起こされたことから、OCNがASRを誘導する内分泌性物質であることが示された。

推薦者コメント

 「OCNによる副交感神経制御メカニズムの解明」など課題は残っているものの、本研究結果によって「骨がストレス反応を制御する」という新たな概念が確立された。これまでにもOCNは神経細胞に作用して、抑うつ状態を改善し学習・記憶を促進することが報告されており(Oury F. et al. Cell. 2013; 155(1): 228-41)、神経学分野における骨組織の重要性が更に高まったと言える。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・堀江 哲寛・檜井 栄一)