力学的刺激応答性チャネルであるPiezo1は骨形成に必要である
著者: | Sun W, Chi S, Li Y, et al. |
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雑誌: | Elife. 2019 Jul 10;8. pii: e47454. |
- Piezo1
- メカノセンシング
- 骨形成
論文サマリー
骨格系への力学的負荷は発生・成長や骨の維持に必要不可欠であるが、力学的刺激が骨形成を活性化する分子メカニズムは不明のままであった。本報告で、著者らは様々な細胞におけるメカノセンシング因子であるPiezo1が骨でも同様の機能を有するかを検討した。BGLAP-Creを用いて骨芽細胞系列でPiezo1をノックアウトすると、骨形成の低下により骨構造や骨強度が著しく低下し、これらのマウスでは後肢免荷によって誘導される骨量減少が観察されなかった。in vitroの微小重力下では骨芽細胞のPiezo1発現が抑制され、逆に流体せん断応力負荷ではPiezo1発現が上昇し、それらによって骨形成能も変化し、さらにin vivoでも同様の結果が得られた。また、骨折を有する女性の骨粗鬆症患者では骨折を有する女性の非骨粗鬆症患者と比較して骨でのPiezo1発現が低値であり、Piezo1発現と骨芽細胞機能との正の相関が観察された(それぞれN = 10)。これらの結果から、Piezo1が骨芽細胞におけるメカノセンシングに関わり、骨粗鬆症や力学的負荷減少誘導性の骨量低下に対する新たな治療標的となりうる可能性が示された。
推薦者コメント
前掲の論文と併せて、Piezo1は骨のメカノセンシングに重要な役割を果たしていることが明らかにされた。一方で、力学的刺激がどのようにPiezo1発現を制御するのかなど、さらなる分子メカニズムの解明が必要であると考えられる。また、これまで力学的刺激による骨形成誘導において重要性が明らかにされてきたSost発現とは相関しないことが示され、この経路に関わる因子の同定が期待される。(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学分野・林 幹人)