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骨細胞による酸素濃度の感知はスクレロスチンのエピジェネティックな発現制御を介して骨量を調節する

Osteocytic oxygen sensing controls bone mass through epigenetic regulation of sclerostin.
著者:Stegen S,Stockmans I,Moermans K,et al.
雑誌:Nat Commun.2018;9:2557.
  • スクレロスチン
  • 低酸素
  • 骨細胞

論文サマリー

 骨細胞の存在する骨小腔内は低酸素環境であるが,骨細胞による酸素濃度の感知が骨恒常性にどのような影響を及ぼすかについては不明であった.著者らは,酸素センサーとして機能するプロリルヒドロキシラーゼ2(Phd2)をDmp1-Creにより骨細胞選択的に欠損させたところ,骨形成促進と骨吸収低下によって骨量が有意に上昇することを見い出した.さらに,これらの骨ではスクレロスチンの発現が低下しており,Phd2欠損細胞ではHIF-1αシグナルの活性化によってサーチュイン1依存的なSostプロモーターのヒストンH3K9脱アセチル化が誘導され,スクレロスチン発現の減少とWnt/β-カテニンシグナルの活性化に至ることが示された.また,骨細胞選択的Phd2欠損マウスでは卵巣摘出や後肢免荷によって誘導される骨量減少が抑制されることも明らかにされた.

推薦者コメント

 骨細胞は低酸素環境において,スクレロスチン発現制御を介して骨量を制御することが証明された.最近,Vhlの骨細胞選択的欠損マウスが非常に強い高骨量の表現型を示す一方,HIF-1αの骨細胞選択的欠損マウスでは骨に影響がないことが報告されており(Loots GG,et al.,Bone.2018;116:307-14),HIF-1αを介さないシグナルの重要性が示唆されている.(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学・林 幹人)