PGC-1αはTAZの発現誘導を介して骨粗鬆症や骨格系の老化における骨格系幹細胞の運命と骨-脂肪のバランスを制御する
PGC-1α Controls Skeletal Stem Cell Fate and Bone-Fat Balance in Osteoporosis and Skeletal Aging by Inducing TAZ.
著者: | Yu B,Huo L,Liu Y,et al. |
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雑誌: | Cell Stem Cell.2018;23:193-209. |
- 骨髄脂肪細胞
- 骨の老化
- PGC-1α
論文サマリー
骨粗鬆症や骨の老化における間葉系前駆細胞の分化異常は骨量の減少と骨髄脂肪細胞の増加に繋がるが,この分化を制御する因子は不明であった.著者らは若齢マウスの骨で発現する転写コアクチベーターPGC-1αがこの過程を制御し,その発現はヒトやマウスの間葉系細胞の老化に伴って低下することを明らかにした.老齢PGC-1α欠損マウスや卵巣摘出したPrx1-Cre,LepR-Creによる間葉系前駆細胞特異的PGC-1αコンディショナル欠損マウスでは,骨形成低下による海綿骨量の減少と骨髄脂肪細胞の増加が観察された.一方,PGC-1αを誘導性に過剰発現させると,卵巣摘出後の骨量減少や骨髄脂肪組織の蓄積が抑制された.さらに,PGC-1αがNRF2とともにTAZの発現を誘導することで骨髄における骨芽細胞と脂肪細胞への分化バランスを制御することも明らかにされた.
推薦者コメント
間葉系前駆細胞におけるPGC-1α発現が骨-脂肪のバランスを制御しており,PGC-1αの発現維持が骨粗鬆症や骨の老化における重要な治療標的である可能性が示された.若齢や正常なエストロゲン濃度が保たれている状態において,PGC-1α欠損のみでは骨に異常が観察されなかったことから,加齢やエストロゲン欠乏などの追加的なストレスに晒された際に,PGC-1αが重要な役割を担っていると考えられる.(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学・林 幹人)