日本骨代謝学会

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過剰のTGF-β産生はがんの骨転移にみられる筋力低下の原因である

Excess TGF-β mediates muscle weakness associated with bone metastases in mice.
著者:Waning DL, Mohammad KS, Reiken S, et al :
雑誌:Nat Med 21 (11) : 1262-1271, 2015 doi: 10.1038/nm.3961. Epub 2015 Oct 12.

論文サマリー

 がん患者の筋力低下のメカニズムは不明で,治療法も確立されていない.本研究では筋力減弱のメカニズムについて骨転移動物モデルを使って検討した.

 乳がん,肺がん,前立腺がんおよび多発性骨髄腫の接種により溶骨性骨転移を呈するマウスでは筋力が低下した.原因は,骨破壊により骨から放出されるTGF-βが筋肉内のNOX4によるRyR1の酸化を高め,筋収縮に不可欠の細胞内Ca2+が細胞外に漏出するためであることが示された.

 骨破壊,TGF-βシグナル,NOX4によるRYR1の酸化,またはCa2+の細胞外漏出,の阻害によりがん患者の筋力低下を治療できる可能性が示された.

推薦者コメント

 骨吸収により骨から放出されるTGF-βががん患者の筋力低下のメカニズムであることを示した点は新知見である.しかし,内臓臓器転移に比べて骨転移を有するがん患者が悪疫質や筋力低下を呈することは少なく,がん患者での骨吸収抑制が筋力低下を防ぐとのエビデンスもないことから,この研究の臨床的関連性は検討の余地がある.(インディアナ大学医学部血液学 腫瘍内科学部門 教授・米田 俊之)