日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 波多 賢二

低酸素のがん細胞から分泌されるセクレトームは,リシルオキシダーゼ(LOX)を介して骨組織に前転移ニッチを構築する

The hypoxic cancer secretome induces pre-metastatic bone lesions through lysyl oxidase.
著者:Cox TR, Rumney RM, Schoof EM, et al :
雑誌:Nature. 2015 Jun 4;522(7554):106-10. doi: 10.1038/nature14492. Epub 2015 May 27.

論文サマリー

がん細胞の転移においては,転移に先立って転移標的組織に形成される前転移ニッチの重要性が推察されている.本研究では,低酸素下のER(—)乳がん細胞を用いたセクレトーム解析を行い,低酸素状態はLOXの分泌量を増加させることを見い出した.臨床サンプルを用いた検討から骨転移とLOXの発現に相関がみられるとともに,がん細胞へのLOXの過剰発現およびマウスへのLOX投与は骨転移を促進した.そのメカニズムとして,LOXはRANKL非依存的に破骨細胞の活性化と骨吸収の促進を誘導することにより骨に前転移ニッチを形成していることが明らかとなった.

推薦者コメント

乳がん細胞から分泌されるLOXが,破骨細胞を介して遠隔臓器である骨組織に前転移ニッチを形成することを見い出した興味深い論文である.しかし,低酸素の乳がん細胞におけるLOXは肺転移ニッチ形成に関与するとの報告もあり(Cancer Cell. 2009),次の研究課題としてER(—)乳がん細胞が肺ではなく骨を転移標的臓器にするメカニズムを解明する必要がある.(大阪大学大学院歯学研究科生化学教室 准教授・波多 賢二)