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骨ニッチは,播種性乳がん細胞の骨への定着の初期段階を促進する

The osteogenic niche promotes early-stage bone colonization of disseminated breast cancer cells.
著者:Wang H, Yu C, Gao X, et al :
雑誌:Cancer Cell. 2015 Feb 9;27(2):193-210. doi: 10.1016/j.ccell.2014.11.017. Epub 2015 Jan 15.

論文サマリー

がんの骨転移初期においては,播種性腫瘍細胞(DTC)の骨組織への定着すなわち微小骨転移が重要となる.本研究では,微小骨転移のメカニズムを解明するために,まず外腸骨動脈にがん細胞を注入する新規の骨転移動物実験モデルを開発した.そして,微小骨転移の形成にはがん細胞のE-カドヘリンと骨芽細胞のN-カドヘリンを介したヘテロな接着結合と,それによりがん細胞で活性化されるAKT-mTOR経路が重要であることを明らかにした.E-カドヘリンの発現と骨転移の発症には有意な相関関係がみられるとともに,mTOR阻害剤は骨転移を抑制した.

推薦者コメント

骨転移の第一段階となる微小骨転移のメカニズムを解明した論文である.E-カドヘリンとN-カドヘリンを介した細胞間接着は微小骨転移だけでなく,がん細胞の休眠状態の獲得と維持,さらにはがん幹細胞ニッチの形成などにも関与している可能性も推察される.mTOR経路を標的とした骨転移治療薬の開発にも期待したい.(大阪大学大学院歯学研究科生化学教室 准教授・波多 賢二)