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14-3-3ζはSmadの機能的パートナーをp53からGli2へと変換し,乳がん細胞に対するTGFβの作用をがん抑制から転移促進へとスイッチする

14-3-3ζ turns TGF-β's function from tumor suppressor to metastasis promoter in breast cancer by contextual changes of Smad partners from p53 to Gli2.
著者:Xu J, Acharya S, Sahin O, et al:
雑誌:Cancer Cell. 2015 Feb 9;27(2):177-92. doi: 10.1016/j.ccell.2014.11.025.

論文サマリー

TGFβは初期のがん細胞に対しては細胞増殖阻害によるがん抑制作用を示す一方で,進行がんに対しては運動・浸潤能の亢進,さらには骨転移の促進などがんの悪性化を促進する.しかし,このTGFβのもつ二面的な作用を制御する分子メカニズムは不明であった.Xuらは,前がん細胞では14-3-3ζがp53の分解を促進することによりSmad2/p53複合体形成を阻害し,がん抑制作用を低下させることを見い出した.その一方で14-3-3ζは,Gli2の安定化とSmad2/Gli2複合体形成の増強を介してTGFβ誘導性のPTHrPの発現を増加させ,骨転移を促進していることが明らかとなった.

推薦者コメント

TGFβのもつがん抑制作用とがん促進作用の変換システム(TGFβスイッチ)の分子メカニズムを解明した興味深い論文である.14-3-3ζを分子標的とすることにより,TGFβの抗腫瘍効果を増強しつつ転移促進作用の阻害を可能にするがん治療薬の開発や,骨転移の早期発見のためのバイオマーカー確立への応用が期待できる.(大阪大学大学院歯学研究科生化学教室 准教授・波多 賢二)