日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 西村 理行

亜鉛イオン-Zip8-MTF1軸による変形性関節症における異化カスケードの制御

Regulation of the catabolic cascade in osteoarthritis by the zinc-ZIP8-MTF1 axis.
著者:Kim JH, Jeon J, Shin M, et al :
雑誌:Cell 156 : 730-743, 2014

論文サマリー

亜鉛イオン輸送体ZIP8の発現が、ヒトおよびマウスの変形性関節症の関節軟骨において著明に増加しており、その結果、亜鉛イオンの関節軟骨細胞内への流入が促進することが明らかになった。この亜鉛イオンの流入が、MMP3、MMP9、MMP12、MMP13およびAdamts5などの基質分解酵素の発現を誘導した。さらに著者らは、亜鉛イオンによるこれら基質分解酵素の発現誘導には、転写因子MTF1の活性化が中心的役割を果たしていることを見い出した。したがって、変形性関節症の発症過程においては、亜鉛イオン-Zip8-MTF1経路が非常に重要な役割を果たしていると考えられた。

推薦者コメント

変形性関節症の発症に亜鉛イオンの代謝が分子、細胞および個体レベルで明らかになったことは、非常に興味深い。亜鉛イオン-Zip8-MTF1経路を標的とした創薬が実現すれば、変形性関節症の治療のパラダイムシフトに繋がる。さらに関節軟骨における亜鉛イオンの動態を検知できれば、変形性関節症の早期診断が可能になると期待される。(大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座生化学教室・西村 理行)