LRP5は脂肪前駆細胞における用量および部位依存的な調節機構を介してヒト脂肪分布を制御する
LRP5 regulates human body fat distribution by modulating adipose progenitor biology in a dose- and depot-specific fashion.
著者: | Loh NY, Neville MJ, Marinou K, et al : |
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雑誌: | Cell Metab 21(2) : 262-272, 2015 |
論文サマリー
Wntシグナルは骨芽細胞および脂肪細胞分化に重要な役割を果たしていることが知られている。著者らはLRP5活性型変異(A242T, N198S)を有する高骨密度患者6例において、[1]腹部脂肪/下肢脂肪量、腹部脂肪/総脂肪量、体幹脂肪/四肢脂肪量の低下、[2]4例にHOMA-IRの低下、がみられることを示した。また、ヒト脂肪組織におけるLRP5 mRNA発現は、痩せの患者より肥満患者において低下し、腹部型肥満患者の臀部脂肪においても低下していた。臀部由来脂肪前駆細胞におけるLRP5ノックダウンにより脂肪細胞分化・増殖抑制効果がみられた。
推薦者コメント
LRP5の活性型変異では骨量の増加のみならず、血管障害やインスリン抵抗性と関連のある腹部肥満が抑制されるという画期的な結果である。腹部脂肪と臀部脂肪におけるLRP5発現や作用の差異など、今後の検討課題もあるが、LRP5は骨粗鬆症治療のみならず、抗メタボリック症候群の創薬ターゲットとなる可能性が示された。(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部生体情報内科学 講師・遠藤 逸朗)