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Wntシグナル受容体であるLRP4に対する中和抗体は、スクレロスチンの機能を阻害し骨量を増加させる

Disruption of Lrp4 function by genetic deletion or pharmacological blockade increases bone mass and serum sclerostin levels
著者:Chang MK, Kramer I, Huber T, Kinzel B, Guth-Gundel S, Leupin O, Kneissel M.
雑誌:Proc Natl Acad Sci USA 111:E5187-5195, 2014
  • 骨リモデリング
  • Sclerostin
  • Wnt

論文サマリー

Wntシグナルは骨形成と骨吸収を巧妙に制御している。骨細胞が産生するスクレロスチンは骨形成を負に調節している。今回、Wntシグナル受容体であるLRP4がスクレロスチンと結合し、骨形成を負に制御する可能性を示す実験結果が報告された。骨芽細胞特異的にLRP4を欠損させたマウスにおいて骨密度の増加が観察された。この時、血中のスクレロスチン濃度が顕著に増加した。抗ヒトLRP4抗体は、LRP4とスクレロスチンの結合を阻害する。骨芽細胞培養系におけるスクレロスチンによる骨芽細胞分化阻害は、抗LRP4抗体により回復した。LRP4は、神経筋接合部にも発現が認められ、神経伝達物質のシグナル伝達にも重要な役割を果たしていることが報告されているが、抗LRP4抗体はLRP4とニコチン/アセチルコリン受容体の集積には影響を与えなかった。さらに、抗LRP4抗体投与のマウスへの投与は、骨形成を促進することにより顕著な骨量増加作用を示した。この時、破骨細胞数には変化が認められなかった。

推薦者コメント

抗スクレロスチン抗体の骨粗鬆症治療薬としての開発が進行している中、アベンティスファーマのグループによる今回の抗LRP4抗体の骨量増加作用は、大変興味深いものである。骨のカップリングメカニズムを考える上でも、Wntシグナルの重要性と複雑性を示す貴重な実験結果であろう。(松本歯科大学生化学・宇田川 信之)