造血幹細胞ニッチにおけるニューロパチーは骨髄増殖性腫瘍の進展に必須である
Neuropathy of haematopoietic stem cell niche is essential for myeloproliferative neoplasms.
著者: | Lorena Arranz et al. |
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雑誌: | Nature 512, 78-81, 2014. |
- 骨髄増殖性腫瘍
- ニッチ
- 神経障害
論文サマリー
正常造血幹細胞ニッチの一つとして nestin+間葉系幹細胞(MSC)が知られており、これが交感神経支配をうけていることも報告されている。造血幹細胞レベルでのJAK2 V617F変異に代表される骨髄増殖性腫瘍myeloproliferative neoplasm (MPN) は、慢性の経過をたどりつつ、3血球系統の様々な組み合わせでの異常増殖と、進展例では骨髄線維化や骨硬化症、脾腫を伴う骨髄不全症に移行し、骨髄移植以外には根治治療のない疾患群である。本研究では、MPN モデルにおいてMPN由来造血幹細胞から産生されるIL-1βにより骨髄交感神経支配の低下が惹起され、それによりnestin+MSCニッチが障害されMPNが進展する構図を示している。β3アドレナリン受容体アゴニストなどによる神経回復とMPN病勢改善も示されている。
推薦者コメント
これまで骨髄移植しか根治治療がなかったMPNについて、病態理解の新たな展開と新規治療の可能性を示す重要な研究である。世界的な研究の流れとして、造血器腫瘍が自分に都合のいい環境を作ることを示す研究が蓄積されてきており、ニッチ側を狙った新たな造血器腫瘍治療戦略を考える上で非常に重要である。(神戸大学医学部附属病院血液内科・片山 義雄)