Orexinは末梢でのネガティブな作用と、それよりも優位な中枢でのポジティブな作用により骨リモデリングを制御する
著者: | Wei W et al, |
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雑誌: | Cell Metabolism. 19, 927-940, 2014 |
- 神経ペプチド
- 骨芽細胞
論文サマリー
orexin (A, B)はlateral hypothalamusより産生されるneuro-peptideで、睡眠や食欲などを制御することが知られており、その欠損や低下ではヒト及びマウスモデルにおいてナルコレプシーや肥満などを生じる。本論文では、orexinが骨量増加因子であることを示している。Orexinには2つの受容体OXR1とOXR2があり、orexin KOとORX2 KOは骨量低下を、ORX1 KOは逆に骨量増加を呈すことが示された。ORX1は主に末梢の骨組織に発現し、局所のghrelinの発現を誘導し骨芽細胞を活性化することが示されている。ghrelin(主には胃から分泌される食欲増進因子だが、近年は骨芽細胞から分泌され骨形成を促進することが知られている)。逆にORX2は脳に発現し、中枢神経系へのORX2選択的agonistの投与実験から、血中のLeptinレベルを下げることで骨芽細胞の活性化から骨量を増加させることが示された。orexin KOとORX2 KOの表現型が同じことから、orexinの作用は主にORX2を介したものであることが考えられた。実際、ORX1/ORX2のダブルKOの表現型はORX2 KOのものであり、末梢のorexin-ORX1- ghrelin上昇、の作用より、中枢のorexin-ORX2-Leptin抑制、の方が骨量制御において有意であることが見いだされた。
推薦者コメント
本論文は、神経作動ペプチドであるorexinが末梢と中枢に作用し、それぞれghrelinとleptinの発現制御を介して骨量を制御することを、遺伝子改変マウスを用いて見事に証明している。ORX1やORX2へのorexinの作用からghrelinとleptinの発現制御機構の説明がないあたりが、より上位の雑誌にいかなかった所以であろうか。いずれにしても、臨床的には、orexin antagonistが不眠症の治療剤として開発が進んでおり、骨にとってはorexin antagonist は骨量減少のリスクを生じ、ORX1の選択的antagonistが局所作用により骨量増加が期待されることを示した点で意義がある論文である。(慶應義塾大学・宮本 健史)