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TOP > Hot paper > 中島 友紀

血管形成と骨形成の生体における連関システム

Endothelial Notch activity promotes angiogenesis and osteogenesis in bone.
著者:Ramasamy SK, Kusumbe AP, Wang L, Adams RH.
雑誌:Nature. 2014 Mar 20;507(7492):376-80.
Coupling of angiogenesis and osteogenesis by a specific vessel subtype in bone.
著者:Kusumbe AP, Ramasamy SK, Adams RH.
雑誌:Nature. 2014 Mar 20;507(7492):
  • 血管
  • 骨芽細胞
  • 内皮細胞

論文サマリー

血管は、血流によって全身の様々な臓器に酸素や栄養分などを運ぶだけでなく、臓器の成長や恒常性、また再生を司っている。骨もまた、他臓器と同様に血管の侵入により、その臓器としての成長や恒常性が保たれていると考えられているが、その詳細はいまだ不明な点が多いのが現状である。 最近、骨内の血管構造に含まれる特殊な血管サブタイプによって血管形成と骨形成が連関していることが明らかにされた(Kusumbe et al, Nature 2014)。本研究で見出された血管は、H型と呼ばれている内皮細胞(CD31hiEmcnhi ECs)を含んでおり、このH型内皮細胞に骨芽前駆細胞(Osx+,Runx2+)や骨芽細胞系細胞(Col1α+)が、隣接または付随する独特な微小環境を形成している。そして、老化に伴い低下する骨構造において、H型内皮細胞と骨芽前駆細胞の量は、著しく低下していることが見出された。さらに、H型内皮細胞の維持に低酸素誘導因子1α(Hif-1α)の重要性も突き止められ、Hif-1αシグナル伝達の低下と加齢に伴う骨量変化の制御メカニズムが提唱された。
さらに同研究グループは、血管内皮のNotchシグナルの活性化が、骨内の血管形成と骨形成を促進していることも明らかにしている (Ramasamy et al, Nature 2014)。内皮細胞特異的にNotchシグナルを破綻させると骨内の血管形態と成長が障害されただけでなく、骨形成低下、長骨短縮、軟骨細胞異常や骨量低下が見出されている。この骨異常には、内皮細胞においてNotchシグナルにより調節されるNogginの放出が関与していること、Noggin組換えタンパク質の投与により、骨の異常は改善されることを実証している。

推薦者コメント

これらの知見は、これまで別々の研究領域として発展してきた血管形成と骨形成を結び付ける分子レベルでの連関システムを立証するパラダイムシフトであり、新たな骨疾患治療の分子基盤の確立においても大きな意味を持つと考えられる。(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学・中島友紀)