【骨やすめ映画館】映画の話 アカデミー賞
今回、中島友紀先生から、以前 に連載していた「映画の話」の復活の依頼を受けてかなり悩みました。正直忙しいので、フルスクリーンで映画を見る機会が激減していて、映画について語る資格がないと思っています。役職にもついているので、学会の途中で抜け出して映画を見に行くというような裏技も使えなくなりましたしね。それでも結局、お引き受けしたのは、中島先生の熱意と「骨休め」というネーミングが気に入ったからです。私にとっても、コーヒーブレイクとなるようにしたいと思います。あるいは、ボケ防止に役立つかな?
次に悩んだのがテーマです。以前の執筆時も苦労しましたが、ネタバレなしに映画を魅力的に紹介していくというのは、かなり難しい仕事です。素直に映画好きが、今、何の話をするかなと考えて、今年の第87回アカデミー賞の話にします。皆さんは、アカデミー賞に何を期待します?自分のお気に入りが選ばれたらうれしくないですか?逆に、外れると悔しいし。映画界の大きなイベントですので、盛り上がりますよね。候補者も、司会者も張り切っていますし。
「セッション」
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今回の受賞者のうち、私のお気に入りは、助演男優賞に選ばれたJKシモンズです。映画を見る時間が減った私にとってのもっぱらの楽しみは、アメリカのテレビドラマをみることです。昔ほどではないですが、米国では映画俳優とテレビドラマ俳優は区別されていて、当然のように前者の方の地位が高いように扱われます。今でこそ、アカデミー賞俳優がテレビドラマに出演することは珍しくなくなりましたが、それでも、逆に、テレビドラマ俳優がアカデミー賞をとるのは至難の業です(ゴールデングローブ賞にはテレビドラマ部門がありますが)。JKシモンズは、犯罪ドラマの金字塔と言われる「Law & Order」やユニークな刑事ドラマ「クローザー」に出演していましたが、どちらも主役というわけではありませんでした。良い役でしたが、演技力を発揮できる様な要素は少なかったと思います。映画では、「スパイダーマン」シリーズにでていますし、結構、出演作はありましたが、目立つ役ではなく、受賞歴はありません。そんな彼が「セッション」(原題:Whiplash)において、指揮者で音楽の教師という役で、助演男優賞をもらいました。どこからみても、生徒に対してアカハラとなる演技は迫力があって、圧巻でした。前半のストーリーは、「あしたのジョー」かと突っ込みを入れたくなる様な、根性を出して頑張るという場面が多かったのですが、最後にひとひねりがあって、新しい映画として見応えが出ました。映画のエンディングのその後が知りたくなる様な余韻も良い感じです。(日本では4月公開予定、私は機内でみました)
「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
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もう一人は、「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(原題:Birdman or (The unexpected virtue of ignorance))で主演を務めたマイケル・キートンです。彼には、主演男優賞を取って欲しかったのですが、選ばれませんでした。彼は、ティム・バートンの「ビートルジュース」以来のファンですが、ティム・バートンが監督をした「バットマン」、「バットマン・リターンズ」にも出演して人気を得ましたが、役者としてのやりがいを求めて、それ以上、続けませんでした。このあたりのキャリアが、「バードマン」の役とかぶるので、彼への当て書きではないかと言われています。好演でしたが、もう少し、柔和な表情もみたいと思いました。最近、「ティム・バートンの世界」展が行われていますが、なぜか「ビートルジュース」は年表にはありますが、写真やキャラクターの資料がありませんでした。ビートルジュースは私の好きなキャラクターで、マイケル・キートンの原点とも言えるので、残念でした。
バードマンは作品賞を受賞し、さらに、メキシコ出身のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャニトウが監督賞を受賞しました。彼は、菊池凛子が注目されることになった「バベル」の監督として知られていますが、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロが出演した「21グラム」が、私のお勧めです。この映画をみて、ちょっと21グラムの意味を知ってみてください。撮影はエマニュエル・ルベツキで、「ゼロ・グラビティー」もそれに近かったのですが、映画がワンテイクで撮っているように見えるのが特徴です。それを知っていたので、ここでカメラが切り替わっているなとか、カメラの枠外で、俳優が休んでいるなとか、ストーリーと関係ないことが気になってしまいました。
「グランド・ブタペスト・ホテル」
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作品としては、「グランド・ブタペスト・ホテル」が好きです。ストーリーはおとぎ話のようですが、映像と登場人物がおしゃれでセンスがよい感じです。作品賞はとれませんでしたが、美術賞、衣装デザイン賞、メイキャップ&ヘアスタイリング賞、作曲賞など納得の受賞です。
日本骨代謝学会の会員の皆様には、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞などにノミネートされた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(原題:The Imitation Game) がお勧めです(脚色賞を受賞)。実話に基づいており、第2次世界大戦でドイツの暗号を解読したアラン・チューリングをベネディクト・カンバーバッチが演じています。彼は、優秀な数学者ですが、発達障害的な所があり、程度が異なっているとは思いますが、私たちのsocietyにもいそうな感じの人物です。カンバーバッチは、ハンサムですが、頭が大きく、天才といわれる数学者の雰囲気を出しています。ちょっと意外なのは、数学者なので一所懸命に数式や確率論を駆使するのかと思いきや、「機械に勝つのは機械だ」という発言することです(これ以上はネタバレとなるので書きません)。私の注目は、暗号解読チームの紅一点、キーラ・ナイトレイ演じるジョーン・クラークです。映画に華やかさを持たせるため付け足したような役柄ですが、ちゃんとした歴史上の人物です。映画でも、チューリングより優秀なように描かれていますが、当時の女性が置かれた状況によりその才能が十分に発揮されなかったようです。実際、当時ケンブリッジ大学には男性にしか学位を授与しないというポリシーがあり、彼女の学位は拒否されたということです。彼女にスポットをあてても、良い映画が出来そうです。
「6才のボクが、大人になるまで。」
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個人的に興味深いのは、監督賞候補のリチャード・リンクレイター(「6才のボクが、大人になるまで。」の監督)とウェス・アンダーソン(「グランド・ブタペスト・ホテル」の監督)が、ともにヒューストン出身ということです。私は、ヒューストンにあるBaylor College of Medicineに留学していたので、思い入れがあります。ヒューストンは人口が全米で4番目の大きな街ですが、テキサスの田舎町の雰囲気もあります。この地出身の人に、「グランド・ブタペスト・ホテル」のようなヨーロッパの伝統的な様式美を取り入れた作品がなぜできたのか、ちょっと不思議です。
最後に、私のアカデミー賞の楽しみ方の一つに、レッドカーペット上を歩いていく映画スターのファッションに対して、ジョアン・リバースが毒舌で批判を繰り広げる番組を見ることがありました。昨年、彼女はなくなったので、今年はファッションに対する批評に切れがなく残念でした。日本なら、ドン小西?
いかがでしたか?また、アカデミー賞の話で盛り上がりましょう。