【ソクラテスの書棚】有川浩作「レインツリーの国」
読み始めた時の印象。なんだか、うざったい今風のカップルの会話だなぁ。
読み終えた時の感想。これからの若い医療人には読んでもらわなければ。そして、年寄り医療人としての反省。
本の紹介なのですが、詳細はいいません。いえません。知ると最初のうざったい気持ちを味あうことができません。 彼女の放つ「….重量オーバーだったんですね。」という台詞から知るハンディキャップ、ここから物語は次の局面に展開していきます。
「レインツリーの国」というのは彼女の開設しているホームページの名前。そこをきっかけにお互いを知ることになるのですが、最初は単なるネット上での恋の駆け引きかと思っていました。しかし、実はそうではなく。
昨年の講義の時に、学生にも勧めました。「感想は期末テストの裏にどうぞ。」と紹介しました。すると半数以上の学生が感想を書いていてくれて、それぞれが非常にいいコメントでした。これから医療人として、どのような気持ちでハンディキャップをもった目の前の患者さんと向き合うのか、その覚悟。そして、患者さんを越えて、人を理解することはどのようなことなのか。そのような哲学的なコメントをくれた学生もいました。また、私にとっては、彼女の「ハンデを気にするなというのは、ハンデのない人だけ」という言葉が心に刺さり、これまで、医療人として、どこまでハンディキャップをもった患者さんに寄り添っていたのだろうという猛省。そんな様々なことを考えさせられる作品でした。
このように学生の感想からも学ぶことが多いので、先日も新しい学年の学生に勧めました。さて、結果が楽しみです。ちなみに、昨年同様に「感想の結果は、テストの点数には加点されません。」