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ソクラテスの書棚

【ソクラテスの書棚】河合莞爾作「デッドマン」

中島 友紀
河合莞爾「デッドマン」
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「ホトケさんは生きていた時に比べ、体重が6キロほど軽くなってました」
鏑木はしばらく考え込んでいたが・・・・。-(本文から)―

頭のない死体、胴体のない死体、手、足が切り取られた死体、6つの猟奇的な他殺死体が東京都内で次々と発見された。そして、現場では臓器保存液の成分が検出されていた。
警視庁捜査第一課の鏑木警部補率いる特別捜査班が結成され、犯人を追うことに。
死体のパーツから人間一人を蘇らせようとする事件として加熱したマスコミ報道を尻目に、鏑木は、6つの死体に違和感を感じていた。
5つの死体は、いずれも若い男性のものだったが、第6の殺人で発見された左足のない死体だけが、若い女性のものだったからだ。
捜査が難航する中、「デッドマン」と称する男から、奇妙な一通のメールが届く。
目を覚ました「僕」は、自分が他人の体をつなぎ合わせて作られた存在であることを知らされ、「僕」たち6人を殺した犯人を暴くために協力したいというのだ。
捜査が進むうちに連続猟奇事件の背後に、隠された驚くべき医学界の闇が明らかになっていく。
「デッドマン」とは、本当に“死体から蘇った”男なのか?本当の「僕」は、一体誰なのか?鏑木特捜班は、犯人を追いつめることができるのか?
第32回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

第一項「日記」から著者の圧倒的な筆力で始まり、興奮の謎解きへの展開する警察小説である。作中でも触れられている様に、島田荘司の推理小説「占星術殺人事件」を基にした部分も見られるが、全く異なるタイプの作品として楽しめる。何と言っても個性派揃いの特別捜査班4人の刑事たちが、本作を面白くする重要なエレメントである。昼行燈だが現場に入ると刑事魂が奮い立つ鏑木、口が悪いが熱血漢で行動力のある正木、スポーツカーを乗り回す資産家で優秀な姫野、プロファイリングの限界を感じながらも犯罪を未然に防ぐことに努める科研の澤田。全く異なる個性が、時にぶつかりながらも、卓越したチームとして捜査を前進させるテンポの良いスピーディーな展開に、どんどん引き込まれていく。また、捜査第一課長でノンキャリアの元原“鬼原”警視正、キャリア入庁の斉木崇“タタリ”管理官など、捜査第一課を構成する刑事たちも実に個性的である。登場人物のコミカルなやり取りだけでなく、刑事という特殊な職業に就いた理由やそれにより失ったものなど、個々の設定が実に巧妙である。人間味あふれる熱い刑事たちと哀しい犯人(復讐者)が織り成す最高級のミステリーサスペンス作品であり、是非、お勧めしたい一冊である。本作は、鏑木特捜班の第一作(2012年)であり、現在、第二作「ドラゴンフライ(2013年)」、第三作「ダンデライオン(2014年)」も出版されている。