【ソクラテスの書棚】松岡圭祐作「ジェームスボンドは来ない」
岡山からフェリーで20分くらいのところに、直島という小さな島があります。直島の由来は、素直な人達が住む島だから、だといわれています。
そんな小さな島で映画のロケの誘致活動がありました。タイトルでわかるように、映画は007シリーズ、結果は、没です。
岡山に移り住んで、間もなくの頃でしたので、なんとなくこのことは覚えていました。それから、10数年。今の私の地元、倉敷の友達との読書会「ソクラテスの会」で課題にならないと多分、心痛くて途中で読むのをやめていたと思います。
素直な島の人達が、一生懸命に頑張るんです。でも、タイトルは「ジェームスボンドは来ない」。ことの成り行きを知ってから読み始めるので、余計に皆のがんばりが、なんだか心にチクチクくるんです。
しかも、最後はそんな島の人達が007の名前を勝手に使っていると、イアン・フレミング財団から訴えられそうになるのです。
しかし、最後に、奇跡が起こるのです。その奇跡で、読み手は一気に心から救われるのです。そして涙します。読んだ後、私たち3人は、その奇跡を実際に見にいくために、島に渡りました。
今は、島全体が現代アートに包まれている直島。読書のあと、ふらりと出向いてみてください。雲一つない晴れの日がお勧めです。