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Runx2欠損がもたらす骨格ラミノパチー様病態

Downregulation of Nesprin1 by Runx2 deficiency is critical for the development of skeletal laminopathy-like pathology.
著者: Saito A, Nagayama K, Okada H, Onodera S, Aida N, Nakamura T, Sawada T, Hojo H, Kato S, Azuma T.
雑誌: Proc Natl Acad Sci U S A. 2025 Apr 15;122(15):e2320138122. doi: 10.1073/pnas.2320138122. Epub 2025 Apr 10. PMID: 40208950.
  • Runx2
  • Nesprin1
  • ラミノパチー

論文サマリー

我々はRunx2欠損iPS細胞を作製し、骨芽細胞への分化誘導後Laminopathy細胞に極めて類似した重度の核形態異常を示すことを発見し、Runx2が核構造の物理的整合性を維持するという新たな機能を明らかにしました。この成果は骨組織分化における転写制御と核構造のクロストークが存在し、骨組織特有のメカニカルストレス応答機構と分化制御との連携にも密接に関与していることを明らかにしました。よってLaminopathyの骨病態理解に加え、骨粗鬆症を含むさまざまな骨疾患の病態解明にも寄与すると考えられます。

さらに本研究では、Runx2発現以前の骨芽細胞分化経路の意義についても明らかにしており、今後の細胞生物学や再生医療分野においても大きな意義を持つ成果です。

我々はRunx2欠損iPS細胞を作製し、骨芽細胞への分化誘導を行った結果、Laminopathy細胞に極めて類似した顕著な核形態異常を示すことを発見しました。これにより、Runx2が核構造の物理的整合性を維持するという、従来知られていなかった新たな機能を担っていることが明らかとなりました。

本研究成果は、骨組織分化における転写制御と核構造とのクロストークの存在を示すとともに、骨特有のメカニカルストレス応答機構と分化制御の密接な連携を示唆するものです。この知見は、Laminopathyにおける骨病態の理解を深めるだけでなく、骨粗鬆症をはじめとする多様な骨疾患の病態解明にも貢献することが期待されます。

さらに本研究は、Runx2発現以前における骨芽細胞分化経路の重要性にも新たな視点を提供しており、Runx2欠iPS細胞のシングルセル次世代シークエンス解析により Runx2欠損細胞でも骨芽細胞分化誘導初期には 骨芽細胞系譜と認識できる細胞集団が存在することも明らかとなりました。

著者コメント

我々はRunx2欠損iPS細胞を作製し、骨芽細胞への分化誘導を行った結果、Laminopathy細胞様の重度の核形態異常を示すことを発見し、Runx2には従来知られていなかった核構造の物理的整合性を維持する新たな機能を発見しました。またRunx2と核構造がクロストークし、骨特有のメカニカルストレス応答機構および分化制御の密接な連携を解明しました。この知見は、Laminopathyにおける骨病態の理解を深めるとともに、骨粗鬆症を含む多様な骨疾患の病態解明、骨細胞生物学や骨組織再生医療の分野においても貢献すると考えられます。本研究にあたり、長崎大学分子硬組織生物学の小守壽文教授、東京大学疾患生命工学センターの鄭雄一教授、大阪大学大学院歯学研究科の大庭伸介教授をはじめ、数多くの先生方より多大なるご指導・ご助言を賜りました。ここに心より深く感謝申し上げます。

(帯津三敬病院 東 俊文)

2025年6月24日