RANK-RANKL結合の可視化および定量化 —病態解明および治療薬の検索のために—
著者: | Nakahama KI, Hidaka S, Goto K, Tada M, Doi T, Nakamura H, Akiyama M, Shinohara M. |
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雑誌: | Bone. 2025 Jun;195:117473. doi: 10.1016/j.bone.2025.117473. |
- RANK
- RANKL
- 破骨細胞
共著者とのお祝いの会にて
論文サマリー
破骨細胞分化はRANK陽性破骨細胞前駆細胞がRANKLにより刺激されることから始まる。未だRANK-RANKL結合を生細胞で検出した報告はない。そこで、RANK-RANKL結合を可視化、定量化することを目的とした。NanoBiT法はタンパク質相互作用を発光により検出する実験系であり、ルシフェラーゼ活性を持つ酵素を2つの部分(LgBとSmB)に分け、それぞれを異なるタンパク質と融合タンパクとして発現させ、相互作用によりLgBとSmBが会合すると酵素活性が再構成される実験系である。そこでRANKとRANKLの細胞外ドメインにLgBとSmBを融合タンパクとして発現するウイルスベクターを構築した。それぞれHeLa細胞に発現させ、共培養したところ、発光基質存在下で強い発光を検出した。その後、蛍光タンパクを導入したLgB-RANK-AcGFPとmCherry-RANKL-SmBを発現させることにより、緑色蛍光発現細胞と赤色蛍光発現細胞の間に強い発光が認められることを発光顕微鏡で経時的に観察することに成功した(図を参照)。この発光がRANK-RANKL結合を現していることはRANKLに対する中和抗体により阻害されることで確認した。次に常染色体劣性骨硬化症(ARO)患者の一部に見られるRANKLやRANKの変異を導入したところ、in vitroで発光が認められなくなり、RANK-RANKL結合に障害が生じていることが示された。さらに、本実験系を用いて3次元骨格低分子化合物のスクリーニングを行ったところ1つの化合物(CRL71-355)にRANK-RANKL結合阻害活性が認められ、骨粗鬆症治療薬のリード化合物となる可能性を示した。
著者コメント
本研究は4〜5年前に近位依存性標識法によるタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)を使った論文が注目された頃に、その手法に感銘を受け、自身が行なっている骨の研究に応用できないかと考えたことに始まりました。そこで、以前から気になっていたRANK陽性破骨細胞前駆細胞とRANKL陽性細胞はどこで出会うのかをin vivoで観察したいと考えました。そのためには先ずin vitroで検討する必要があると考えて実験を考え、最初はSplit型のTurboIDでビオチン化の検出を試みましたが、残念ながら上手くいきませんでした。次にNanoBiT法を使ったところRANK-RANKL結合を発光として捉えることに成功し、大学院生と大喜びしたことが良い思い出になっています。現在はトランスジェニックマウスを作製しin vivoでRANK-RANKL結合を捉えることを夢見ています。
(東京科学大学顎顔面頸部再建学講座分子細胞機能学 中濵 健一)
2025年6月24日