The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch576_uemura

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片側変形性股関節症症例における大腿骨近位部骨密度の患健側比較

Side-to-side differences in hip bone mineral density in patients with unilateral hip osteoarthritis.
著者: Uemura K, Kono S, Takashima K, Tamura K, Higuchi R, Mae H, Nakamura N, Otake Y, Sato Y, Sugano N, Okada S, Hamada H.
雑誌: Bone. 2025 Jun;195:117456. doi: 10.1016/j.bone.2025.117456.
  • qCT
  • 大腿骨骨密度
  • 左右差


2nd authorの河野先生(右)と学会会場にて撮影

論文サマリー

片側変形性股関節症(OA)患者において大腿骨近位部の骨密度(BMD)を正確に評価することは、骨粗鬆症の診断・治療介入や人工股関節置換術におけるインプラント選択において重要である。一方、ガイドライン上ではOA側、健側のどちら側の大腿骨のBMDを計測すべきにかに関しては定められていない。そこで本研究では、Quantitative CT(QCT)を用いて両側のBMDの差を測定し、その差に影響する関連因子を検討するとともに、骨粗鬆症の診断に適した評価側を明らかにすることとした。

 

対象は片側OA症の女性108名とした。QCTを用い、深層学習に基づく自動解析によって両股関節のBMD(total領域、頸部領域、小転子以遠)を測定し、OA側と健側のBMD差を各領域で評価した。さらに、患者の背景要因、Crowe分類、Bombelli分類、膝OAの有無、股関節機能スコア、殿筋の体積および密度がtotal領域および頸部領域の左右のBMD差に影響を与えるか否かを解析した。また、BMDの左右差が骨粗鬆症診断に及ぼす影響も検討した。

その結果、OA側のBMDは、健側と比較してtotal領域で6.9%低く、頸部領域で14.5%高く、小転子以遠で9.4%低かった。OA側のBMD低下に関連する因子として、若年齢、Bombelli分類(萎縮型)、および大殿筋の体積低下が挙げられた。片側のBMDを元に骨粗鬆症を診断した場合、OA側の感度は61%であり、健側の88%より低いことが明らかとなった。

本研究により、片側OA症例で片側を計測する場合、健側のBMD測定がより適切であることが推察されたが、特に若年者や萎縮型OA患者においては、両側のBMD評価が正確な骨粗鬆症診断には重要であると考えられた。

著者コメント

これまでに我々は、深層学習を用いて股関節CTから大腿骨近位部の骨密度を計測するシステムを開発してきました。本研究では、このシステムを応用し、片側OA症例の大腿骨骨密度を両側で計測し、その左右差と関連因子を検討しました。

本研究にご協力いただいた共著者の先生方に、心より感謝申し上げます。

(大阪大学運動器医工学治療学 上村 圭亮)

2025年6月24日