関節リウマチ患者の骨折発生率は増加している: IORRAコホートを用いた13年間の縦断的研究
著者: | Furuya T, Inoue E, Yamanaka H, Harigai M, Tanaka E |
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雑誌: | J Bone Miner Metab. 2025 Apr 7. doi: 10.1007/s00774-025-01598-8 |
- 非椎体骨折
- 標準化発生比
- RA
左)古谷武文(筆者)、右)東京女子医科大学 膠原病リウマチ内科 田中榮一准教授
論文サマリー
本研究では、関節リウマチ(RA)患者における骨折の発生率を、IORRA(Institute of Rheumatology Rheumatoid Arthritis)コホートを用いて13年間(2011~2023年)にわたり検討した。IORRAは日本人RA患者を対象とした前向き観察研究であり、2011年から2023年の間に参加したRA患者10,257例を解析対象とした。臨床情報および骨折の発生は年2回の自己報告で収集され、骨折発生率は性別、年齢、日本版HAQ(J-HAQ)スコアで標準化し、2年ごとに算出した。この期間中、DAS28寛解率は38.0%から64.7%へ、生物学的製剤(bDMARDs)の使用率は14.2%から42.2%へ、骨粗鬆症治療薬は31.6%から38.3%へと増加し、グルココルチコイド使用率は38.3%から22.2%に減少した(図1)。
一方、全骨折および非椎体骨折の発生率は、それぞれ2011年の1000人年あたり47.2件・36.7件から、2023年には52.8件・43.0件へと増加した(図2)。
著者コメント
本研究は、2001~2010年のRA患者における骨折発生率を検討した先行研究に基づき、2011年からの13年間の変化を明らかにした縦断研究です。RA治療は大きく進歩し病状も改善しましたが、骨折発生率は減少せず、むしろ増加傾向であることが示唆されました。RA患者における骨折予防のさらなる取り組みが重要です。
本研究は、多数例を対象とした長期縦断研究であり、統計の専門家である井上永介先生のご協力なしには成り立ちませんでした。IORRAコホートを25年前にゼロから立ち上げられた山中 寿先生、そしてその後継としてご尽力された針谷正祥先生、田中榮一先生に、心より感謝申し上げます。
(医療法人社団平世会 若林医院 古谷 武文)
2025年6月24日