骨粗鬆症の治療中止に関する予測因子:JOINT-05のサブ解析より
著者: | Yasuhiro Takeuchi, Yuki Nakatsuka, Shiro Tanaka, Tatsuhiko Kuroda, Hiroshi Hagino, Satoshi Mori, Satoshi Soen |
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雑誌: | J Bone Miner Metab. 2024. doi: 10.1007/s00774-024-01541-3. |
- テリパラチド
- アレンドロネート
- treatment discontinuation
論文サマリー
背景:週1回投与テリパラチド(TPTD)およびアレンドロネート(ALN)による治療中止の予測因子を特定するために、骨折リスクの高い閉経後日本人女性を対象としたランダム化比較試験(JOINT-05)のデータを再解析した。。
方法:対象者は、72週間の週1回のTPTDの後に48週間のALN(TPTD-ALN群)の逐次治療、または120週間のALN単独(ALN群)両方のいずれかに割り付けられた。
ベースラインデータとして併存疾患、骨折の有無、認知機能、QOL、ADL、骨代謝パラメーター、および栄養素摂取量を含むデータが収集された。エンドポイントは観察期間中の治療中止であり、その要因別に3種類:①コンプライアンス不良、②有害事象(AE)関連、または③あらゆる理由、に区分した。治療中止に対するベースラインデータの予測因子のオッズ比(OR)は、単回帰分析または多重回帰分析によって評価した。
結果:TPTD-ALN群では234人(49.0%)に、ALN群では167人(34.2%)に治療中止が発生した。
① コンプライアンス不良による中止に対しては、TPTD-ALN群では血清カルシウム低値が、ALN群では、高脂血症の既存、認知機能低下、低体重が有意な予測因子だった。
② AE関連の中止に対しては、ALN群では認知機能の低値、BMIとアルコール摂取量の高値が有意な予測因子だった。
③ あらゆる理由による中止に対しては、TPTD-ALN群では血清カルシウム低値、ALN群では認知機能低下がリスク因子だった。
結論:治療中止に影響する因子は薬剤によって異なり、治療を開始する際に、TPTDでは血清カルシウム値に、ALNでは認知機能の低下に配慮することが、治療の継続性を高めることに貢献する可能性が示唆された。
著者コメント
A-TOP研究会で実施されたJOINT-05はすでに完了し、テリパラチドの骨折抑制効果のevidenceが報告されています(Hagino H. Osteoporos Int. 2021;32:2301; Mori S. Osteoporos Int. 2023;34:189)。JOINT-05では骨粗鬆症診療の課題である治療中止の情報が収集されていました。計画の中で多様な背景因子が収集されていることから、どの因子が中止に影響しているのか、またその因子は薬剤別に異なるか否かに興味を持ち、今回のサブグループ解析を行いました。結果として、TPTDとALNでは治療中止の因子は異なり、治療開始時にそれぞれの薬剤で配慮すべき点の知見が得られ、臨床現場へメッセージを提供することが出来ました。ALN中止と認知機能低下との関連は、独特なALNの内服方法から納得できるものでした。一方で、TPTD中止と血清カルシウム低値との関連については、投与直後のカルシウム濃度上昇の影響などを検討しましたが、関連性は見いだせず、その機序は不明であり、今後の検討課題となりました。
(国家公務員共済組合連合会 虎ノ門病院 副院長 竹内 靖博)
2024年12月6日