アロマターゼ阻害薬関連骨量減少症に対するビスホスホネート製剤およびデノスマブ製剤の骨質治療効果に対する検討
著者: | Onuma E, Saito S, Tsuburai T, Yoshikata H, Adachi S, Yamamoto S, Narui K, Hayama T, Murase M, Mizushima T, Miyagi E, Sakakibara H, Asano R. |
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雑誌: | Bone Miner Metab. 2024 Aug 13. doi: 10.1007/s00774-024-01542-2. Online ahead of print. PMID: 39136781. |
- アロマターゼ阻害薬
- 骨粗鬆症
- TBS (trabecular bone scoretbs)
前列左から2番目が筆頭著者(大沼えみ)、後列右から3番目が責任著者(齊藤真)です
論文サマリー
アロマターゼ阻害薬は閉経後乳がんの術後ホルモン療法として広く用いられているが、副作用として骨量減少や骨折の頻度増加がある。アロマターゼ阻害薬関連骨量減少Aromatase Inhibitor -associated Bone Loss: AIBL)の治療にはビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤が用いられ、Bone Mineral Density(BMD)を上昇させることが示されている。
乳がんは罹患率が高い一方生存率の高い癌であり、後療法の推奨期間も5年以上と長い。長期的な観点から骨の健康を考えるうえで、骨密度だけでなく骨質も重要な視点である。骨質評価法の中で、汎用性、簡便性の観点からTrabecular Bone Score(TBS)が有用視されている。TBSは既存の腰椎DXAのデータから後方視的に解析が可能であり、簡便で患者の追加検査や被爆の負担がない。本研究ではAIBL患者の治療においてビスホスホネート製剤とデノスマブ製剤を直接比較すること、デノスマブ製剤のTBSへの効果を明らかにすることを目的とした。
当院でAIBL治療を行った閉経後女性39名(ビスホスホネート群:21名、デノスマブ群:18名)を対象とし、DXA法による腰椎および大腿骨の骨密度、TBS、骨代謝マーカーの変化について後方視的に検討した。統計解析にはMann-Whitney検定、Wilcox検定を用いた。
治療開始後24か月の腰椎BMDの変化率はビスホスホネート群で5.82±1.10%、デノスマブ群で10.49±1.20%で、デノスマブ群で有意に増加した。大腿骨BMDの変化率はビスホスホネート群で2.69±1.16%、デノスマブ群で2.95±1.26%で両群間に有意差はなかった。TRACP-5 bの減少率はデノスマブ群で有意に高かった。治療開始後24か月のTBSの変化率はビスホスホネート群で0.53±1.26%、デノスマブ群で1.08±1.33%で両群間に有意差は認めなかった。
ビスホスホネート製剤、デノスマブ製剤ともにAIBL患者の骨密度を上昇させ、骨代謝を改善し、TBSの減少を抑制する可能性が示唆された。
著者コメント
当院婦人科では従来、内分泌外来でターナー症候群や神経性やせ症など若年者の骨粗鬆症管理を行ってきましたが、2015年9月から新たに「乳がん患者のための女性ヘルスケア外来」を設置し、乳腺外科と連携して卵巣欠落症状や骨粗鬆症に対する診療を始めました。 日常診療の中で乳癌サバイバーに対する最適な骨粗鬆症診療は?と考えたところから本研究が始まり、乳腺外科の先生方にもご協力いただき発表することができました。 アロマターゼ阻害薬関連骨量減少症の治療に用いられる骨吸収抑制薬は、骨折予防だけでなく骨転移を予防する可能性も示されています。 今後も乳癌サバイバーの長期的なヘルスケアの観点から、効果的な骨粗鬆症管理について検討していきたいと思います。
(横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科 大沼 えみ)
2024年12月6日