日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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実臨床における原発性および続発性骨粗鬆症に対するロモソズマブの有効性と安全性

Real-world effects, safety, and predictors of the effectiveness of romosozumab in primary and secondary osteoporosis: An observational study.
著者: Mineta K, Nishisho T, Okada M, Kamada M, Sairyo K.
雑誌: Bone. 2024 Jun 12;186:117164. doi: 10.1016/j.bone.2024.117164. Online ahead of print.
  • ロモソズマブ
  • 抗スクレロスチン抗体
  • 骨粗鬆症


左 筆頭著者: 峯田和明 右 責任著者: 西庄俊彦

論文サマリー

ロモソズマブは骨形成促進と骨吸収抑制のdual effectを有する抗スクレロスチン抗体であり、 本邦では2019年より骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者に使用可能となった骨粗鬆症治療薬である。 FRAME試験などのpivotal studyにおいては高い骨密度上昇効果、 骨折抑制効果ならびに安全性が示された薬剤である。 本研究の目的は実臨床におけるロモソズマブの有効性と安全性についての調査ならびに骨密度上昇効果に影響を与える因子の検討である。

対象は2019年3月から2022年6月までにロモソズマブ投与を開始した骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者460例である。 4週毎にロモソズマブ(210mg)を皮下注射した。 48週の投与が可能であった366例に対し、 腰椎(L1-4)と全大腿骨近位部おける骨密度の変化, 新規骨折発生の有無ならびに腰椎骨密度上昇効果に影響を与える因子を調査した。 48週までに中断した94例については中断理由と有害事象を調査した。

48週時点における骨密度上昇効果は原発性骨粗鬆症患者が続発性骨粗鬆症よりも高かった。 前投与薬別の検討では, 前治療が無い患者が最も高い骨密度上昇効果を示し, デノスマブが前投与されている患者は最も低い骨密度上昇効果を示した(表1)。 新規骨折は11例(3.0%)に発生し, 椎体骨折4例(デノスマブ前投与群1例)、 大腿骨近位部骨折3例(デノスマブ前投与群1例)、 その他4例(デノスマブ前投与群2例)であった。 48週後の腰椎骨密度上昇効果に影響を与える因子は、 投与前の腰椎骨密度が低い, 腎機能が良い, 血清TRACP-5b値が高い, ならびに投与1か月後の血清TRACP-5b値が低い、 血清P1NP値が高いものであった。

94例の中断理由は有害事象34例, 転医32例, 自己判断19例, 経済的7例ならびに関連の無い死亡2例であった。 心血管イベントは9例(2.0%)に発生し、 そのうち3例(0.65%)が致死的であった。 心血管イベントは全例が続発性骨粗鬆症患者からの発生で、 その他の有害事象も続発性骨粗鬆症患者に多く認めた(表2)。


表2は画像クリックで拡大表示します

本研究においてロモソズマブは実臨床においても高い有効性が示された。 原発性骨粗鬆症患者には安全に使用でき、 特に前投与が無い患者には高い骨密度上昇効果を認めた。 続発性骨粗鬆症患者に使用する際には、 投与前に十分に心血管イベントのリスクについての検討と説明が必要である。

著者コメント

本研究の結果から実臨床でロモソズマブを使用する際には, 特に前投与薬がなく腰椎骨密度が低値(-3.5 SD以下)の患者に対しては高い骨密度上昇効果が期待できると自信をもってインフォームドコンセントが出来るようになりました。 原発性骨粗鬆症患者に対してはより高い効果が期待され、 続発性骨粗鬆症患者よりも比較的安全に使用できる薬剤でした。 続発性骨粗鬆症患者に対しては, 原発性骨粗鬆症患者よりも骨密度上昇効果が少し劣ることや心血管イベントのリスクを十分に検討し、慎重に使用することが重要であるとあらためて確認することができました。 前投与薬がデノスマブの場合にリバウンド現象は認めませんでしたが、 本研究結果からも積極的な使用は控えたほうが良いと思われます。

(責任著者:徳島大学 大学院医歯薬学研究部運動機能外科学 西庄 俊彦 / 筆頭著者:徳島健生病院整形外科 峯田 和明)