関節リウマチ合併の有無による閉経後骨粗鬆症患者に対するロモソズマブの治療効果の比較検討
著者: | Kosuke Ebina · Yoshio Nagayama · Masafumi Kashii · Hideki Tsuboi · Gensuke Okamura · Akira Miyama · Yuki Etani · Takaaki Noguchi · Makoto Hirao · Taihei Miura · Yuji Fukuda · Takuya Kurihara · Ken Nakata · Seiji Okada |
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雑誌: | Osteoporosis International. 2024. Jan 31. doi: 10.1007/s00198-024-07019-2 |
- ロモソズマブ
- 関節リウマチ
- 閉経後骨粗鬆症
著者(後列右2人目)、蛯名耕介先生(前列左3人目)と、阪大整形外科リウマチグループの皆様
論文サマリー
背景:骨細胞より産生されるスクレロスチンは骨形成を抑制し骨吸収を亢進する。関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis;RA)の病態と関連する、炎症性サイトカインTNF-αや骨へのメカニカルストレスの低下は、骨細胞からのスクレロスチン産生を促進する。実際に対照群と比較してRA患者の血清スクレロスチン濃度は高値であることが報告されているが、抗スクレロスチン抗体であるロモソズマブの有効性にRAの病態が及ぼす影響については明らかとなっていない。
目的: Primary endpointはRA合併の有無による閉経後骨粗鬆症患者に対するロモソズマブ(ROMO)治療効果を骨代謝マーカー・骨密度の変化率より比較検討すること。Secondary endpointはROMOの治療効果に影響を及ぼすRA関連因子を検討すること。
方法:多施設共同・後ろ向き・症例対照研究で、グルココルチコイドの経口投与を受けていない、12ヶ月間ROMOを継続投与された閉経後骨粗鬆症患者171例(RA群59例、非RA群121例)を対象とした。傾向スコアマッチングで交絡因子(年齢・body mass index・骨密度 [腰椎・大腿骨近位部・大腿骨頚部のT-Score]・前骨粗鬆症治療薬)での調整を行い、各群41例の患者が抽出された。ベースライン患者背景は:全体群(平均年齢76.3歳、腰椎骨密度T-Score -3.0、45.1%が骨粗鬆症治療歴なし)、RA群(anti-citrullinated peptide antibody [ACPA;破骨細胞分化を誘導] 陽性率80.5%・抗体価 206.2U/ml、Clinical Disease Activity Index [CDAI;RA疾患活動性指標] 13.6、Health Assessment Questionnaire-Disability Index [HAQ-DI;身体機能障害指標] 0.9)であった。骨密度(Bone Mineral Density;BMD)と骨代謝マーカーを12ヵ月間モニターした。
結果:骨形成マーカーPINPの増加率と、骨吸収マーカーTRACP-5bの減少率は、非RA群と比較してRA群で小さい傾向を示し、RA合併ではアナボリックウィンドウが小さくなることが示唆された。RA群では非RA群と比較して、ROMO治療12ヵ月後のBMD増加率は腰椎(9.1% 対 12.6%;P = 0.013)と大腿骨近位部(2.4% 対 4.8%;P = 0.025)で有意に低かった。全RA群(n=59)におけるRA関連因子(過去にRA患者の骨密度との関連が報告されている4因子 [ACPA力価・CDAI・HAQ-DI・生物学的製剤もしくはJAK阻害剤の併用])と、ROMO導入12ヵ月間後のBMD変化率との相関について重回帰分析を行った。その結果、ACPA抗体価と腰椎BMDとの間、およびHAQ-DIと大腿骨頚部BMDとの間には有意な負の相関が認められた。
結論:ROMOの有効性はグルコルチコイド非併用例でもRA関連因子によって減弱される可能性がある。
著者コメント
阪大整形外科リウマチグループの一員として、開業後も医療の発展に貢献するべく共同研究に参加させていただいております。日々の実臨床における疑問を契機とした本研究が、蛯名耕介先生をはじめとする阪大整形外科リウマチグループからの論文としてpublishされたことを大変嬉しく思います。本研究成果がRA患者さんの骨粗鬆症治療成績の向上の一助となりましたら幸甚です。
(永山リウマチ整形外科 永山 芳大 / 大阪大学大学院 医学系研究科 整形外科 蛯名 耕介)
2024年7月23日