日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

1st Author

TOP > 1st Author > 板谷 喜朗

大腸癌細胞におけるosteoprotegerinの発現低下は、腫瘍関連マクロファージの活性化を介して肝転移を促進する

Downregulation of osteoprotegerin in colorectal cancer cells promotes liver metastasis via activating tumor‑associated macrophage
著者: Hirata W, Itatani Y, Masui H, Kawada K, Mizuno R, Yamamoto T, Okamoto T, Ogawa R, Inamoto S, Maekawa H, Okamura R, Kiyasu Y, Hanada K, Okamoto M, Nishikawa Y, Sugimoto N, Tamura T, Hatano E, Sakai Y, Obama K.
雑誌: Sci Rep. 2023 Dec 14;13(1):22217. doi: 10.1038/s41598-023-49312-w.
  • Osteoprotegerin
  • 大腸癌
  • 肝転移
  • 腫瘍微小環境
  • TAM

平田渉、板谷喜朗
京都大学消化管外科・平田渉、板谷喜朗

論文サマリー

【背景】大腸癌は高頻度に肝臓へ転移しその予後は悪い。したがって、大腸癌の克服のためには、肝転移のメカニズム解明とその制御が不可欠である。腫瘍微小環境が腫瘍の進行と化学療法抵抗性に寄与していることはよく知られており、腫瘍微小環境を癌治療の標的にすることへの関心が高まっている。Osteoprotegerin (OPG) は、receptor activator of nuclear factor-kappa B (RANK) ligand (RANKL) に対するデコイ受容体として機能する分泌型サイトカイン受容体である。抗RANKL中和抗体Denosumabは骨関連イベントを軽減する骨転移の標準治療法であるが、骨以外にも、RANKL-RANKシグナルは腫瘍の進行過程の様々な段階に関与することが示されており、RANKL-RANKシグナルを負に制御するOPGの抗腫瘍効果が期待される。しかし、大腸癌の腫瘍微小環境におけるOPG-RANKL-RANK軸の役割と大腸癌細胞におけるOPG発現の臨床的意義についてはまだ不明である。

【目的、方法】大腸癌の腫瘍微小環境、特に大腸癌肝転移におけるOPGの分子機構を解明し、大腸癌肝転移に対する新たな治療戦略の可能性を探ることを目的とした。大腸癌細胞株、THP1細胞株、大腸癌切除標本を用いてOPG発現の臨床的意義と腫瘍関連マクロファージ(TAM)へ与える影響を評価した。さらに、大腸癌肝転移マウスモデルを作成し、腫瘍微小環境におけるOPGの役割を調べた。

【結果】公開データベースであるTCGAを用いたin silico解析と、大腸癌切除標本の免疫染色の解析では、大腸癌原発巣のOPG発現低下が予後不良と関連し、肝転移巣では原発巣と比較してOPG発現が低下していた。in vitroの解析では、大腸癌細胞株に対してOPGを過剰発現させたりノックアウトさせても癌細胞の増殖や遊走に直接的には影響しなかったが、THP1をマクロファージへ分化させたdTHP1との共培養実験において、癌細胞でのOPG発現低下により、RANKL-RANKシグナルを介して、dTHP1の遊走を活性化した。大腸癌肝転移巣の免疫染色では、OPG発現低下とRANK陽性M2(腫瘍促進性)TAMの集積が相関した。マウス大腸癌肝転移モデルでは、Opgの低発現はM2TAMを肝微小環境に集積させることによって大腸癌の肝転移を促進し、Opg過剰発現や抗Rankl抗体投与により、M2TAMの集積が妨げられ、大腸癌肝転移が抑制された。

【結論】大腸癌細胞におけるOPGの発現低下が、腫瘍微小環境においてTAMの活性化を介して肝転移を促進する分子機構を解明した。OPGまたは抗RANKL中和抗体によるRANKL-RANK経路の阻害は、OPG低発現大腸癌肝転移に対する新たな治療戦略となる可能性がある。

著者コメント

近年、癌研究において腫瘍微小環境に注目が集まっています。癌細胞は免疫細胞などの正常宿主細胞と複雑なネットワークを構成しており、腫瘍微小環境を癌に都合良く変化させる能力があります。私たちは腫瘍微小環境をターゲットとした大腸癌の治療戦略を探索する目的で、RANKL-RANKシグナルの腫瘍促進作用と、そのデコイ受容体であるOPGに注目しました。大腸癌のOPG発現低下は、腫瘍微小環境におけるRANKL-RANKシグナルにより活性化されるTAMを活性化し、大腸癌の特に肝転移に寄与する可能性が示唆されました。今回、腫瘍免疫の内容にも関わらず、このような名誉ある論文掲載のご提案をいただき、心より感謝申し上げます。

(京都大学消化管外科 平田 渉 / 板谷 喜朗)