日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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グルココルチコイド療法の最初の90日における1日平均処方量、処方日数、および総処方量と、その後の大腿骨近位部および臨床的椎体骨折リスクとの関連:全国健康保険レセプトデータベースを用いた後向きコホート研究

Average daily glucocorticoid dose, number of prescription days, and cumulative dose in the initial 90 days of glucocorticoid therapy are associated with subsequent hip and clinical vertebral fracture risk: a retrospective cohort study using a nationwide health insurance claims database in Japan.
著者: Iki M, Fujimori K, Nakatoh S, Tamaki J, Ishii S, Okimoto N, Imano H, Ogawa S.
雑誌: Osteoporos Int. 2024 Jan 24. doi: 10.1007/s00198-024-07023-6. Online ahead of print.PMID: 38267664
  • レセプトデータベース
  • グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症
  • 骨折


シンポジウム18研究グループメンバー

論文サマリー

目的:グルココルチコイド (GC) 療法の開始から3ヶ月経過するかその予定である患者には骨折リスク評価を行うことがガイドラインにより推奨されている。しかし、GC治療開始から3ヶ月の時点でのGC曝露がその後の骨折リスクと関連するかどうかは明らかではなく、また、プレドニゾロン(PSL)換算で5 mg PSL/日未満の骨折リスクへの影響も明確ではなかった。そこで、日本のほぼ全てのレセプト情報を格納しているレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、これらの点を検討した。

方法:GC療法の最初の90日間に70 mg PSL以上のGCを処方され、その後1080日間大腿骨近位部骨折および臨床的椎体骨折の発生について追跡調査された50歳以下の患者をNDBから抽出した。GC療法の最初の90日間のGC処方が≧1mg PSL/日かつ≧30日をGC曝露群とし、さらに1日量と処方日数によって細分した。またGC処方<5mg PSL/日かつ<30日をGCの影響が見られないと考えられる対照群とした。GC曝露と骨折のリスクとの関連性はCox回帰で交絡要因を調整して評価した。

結果:GC曝露群として女性 316,396 人と男性 299,871人を、対照群として女性 43,164人と男性 33,702人を抽出した。対照群と比較して、1日GC処方量、処方日数、および総GC処方量はいずれも用量依存的に骨折リスクと関連していた。5 mg PSL/日以上処方された患者では、GC処方が60~89日の処方日数で骨折リスクの有意な上昇を示した。また、GC治療最初の90日間に90日処方を受けた患者では、1 mg PSL/日以上2.5 mg PSL/日未満で骨折リスクの有意な上昇を認めた。

結論:GC治療の最初の90日間におけるGC処方は、その後の大腿骨近位部骨折および臨床的椎体骨折のリスクと用量依存的に関連していた。また、GCは、これまでの報告よりも低用量、短期間で骨折リスクを上昇させる可能性が認められた。

著者コメント

本研究は骨粗鬆症診療に関するNDB(NDBJ-OS)研究グループによって実施された一連の研究の一つです。同グループは整形外科学、老年病学、データサイエンス、薬学、疫学、公衆衛生学など多分野の研究者を擁し、NDBを活用して、骨粗鬆症診療改善のための様々な視点からの研究を実施しています。その概要は2023年の第25回日本骨粗鬆症学会のシンポジウム18で発表した通りです。NDBは2012年以降のほぼすべてのセプトデータを格納し、その数は年間20億件近く、2022年度末で総計250億件にのぼります。NDBの強みはこの悉皆性、すなわち母集団の代表性と、規模が膨大で希少疾患の解析が可能であること、そして医療機関が変わっても患者を個人レベルで追跡できることです。希な事象である大腿骨近位部骨折を追跡し、小さなリスク上昇を検出した本研究はNDBでなければなし得なかったものです。さらにNDBは介護保険データベースと連結できるようになり、今後、人口動態統計などの保健統計との連結も順次進む予定で、ますます広く深い分析が期待されます。

(近畿大学医学部公衆衛生学教室 伊木 雅之)