日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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高齢慢性腎臓病患者におけるオステオサルコペニアの長期的生命予後,腎予後への影響

Effect of osteosarcopenia on longitudinal mortality risk and chronic kidney disease progression in older adults.
著者: Nakano Y, Mandai S, Naito S, Fujiki T, Mori Y, Ando F, Mori T, Susa K, Iimori S, Sohara E, Uchida S.
雑誌: Bone. 2024; 179: 116975. doi: 10.1016/j.bone.2023.116975.PMID: 37993037
  • 慢性腎臓病
  • オステオサルコペニア
  • 高齢者

萬代 新太郎
市立青梅総合医療センター腎臓内科・中野雄太先生

論文サマリー

近年、高齢者を中心にサルコペニア(筋肉量と筋力が低下した状態)に加えて、骨量の低下が併存したオステオサルコペニアが特に予後を低下させる可能性が指摘され始め、筋肉と骨の密接な関連と病態的因果関係が注目されている。慢性腎臓病は本邦でも8人に1人が罹患し、全身の臓器機能や液性因子の変容を介して生命予後を悪化させる重大な疾患であり、筋肉や骨とも関連が深い。実際にサルコペニアや骨密度低下を合併する慢性腎臓病患者は多く、予後や生活の質に甚大な影響を及ぼす。しかしながら、オステオサルコペニアが慢性腎臓病患者の転機、特に腎予後にどのような影響を及ぼすかは明らかではなかった。

本研究は、当院に外来通院する65歳以上の慢性腎臓病患者251名を対象に、観察開始地点に握力や歩行速度、筋肉量、骨量を測定した上で約5年間追跡し、筋量、筋力や骨量の生命予後や慢性腎臓病の進展への影響を解析した。骨量低下(T score -1.0以下)単独群、サルコペニア単独群、オステオサルコペニア(骨量低下とサルコペニアの合併)群、のこる正常群の4群を比較し、複合アウトカム(全死亡・透析導入・心血管イベントによる入院)と腎アウトカム[30%以上の推定糸球体濾過量(eGFR)低下または透析導入]についてCox比例ハザードモデルで性別や年齢、既往などの交絡因子を調整し解析を行った。正常群と比べてオステオサルコペニア群で複合アウトカムのハザード比(HR) 3.28 [95 % 信頼区間(CI): 1.52–7.08 P=0.002]、腎アウトカムHR 2.07 (95 % CI: 1.10–3.89 P=0.024)とオステオサルコペニアで有意に予後が悪化した一方で、骨量低下単独群やサルコペニア単独群では有意な差はなかった。

オステオサルコペニア群では、サルコペニア単独群よりも握力や筋量がさらに低下しており、サルコペニアが重症であった。これに着目し、筋、骨、BMIなど個別のプロファイルのアウトカムへの影響を解析した。握力、筋量、骨量で調整した多変量解析を行うと握力1 kg当たりの増加が複合アウトカム HR 0.93 (95%CI: 0.89-0.98 P=0.007)、腎アウトカム HR 0.96 (95%CI: 0.92-0.99 P=0.026)ともに最も強力に予後改善に関連した。

本研究の成果として初めて慢性腎臓病患者におけるオステオサルコペニアの長期的転機への影響を明らかにした。従来は骨と腎、または筋と腎の関連を個別に検討する研究はあったが、同時に評価することの重要性が明らかになった。特に骨量や筋量低下に増して筋力(握力)が強く予後を左右する因子であることを示している。多くのランダム化比較試験で運動療法が慢性腎臓病患者の予後を改善させることは示されている。腎予後自体の改善も視野に、筋力を達成評価項目として重要視すべきことが示唆される。オステオサルコペニアの病態理解とともに、慢性腎臓病患者の集学的診療に新たな意味づけを与える成果と考えられた。

萬代 新太郎

著者コメント

慢性腎臓病と加齢、加齢性疾患は深い繋がりを持っています。集学的診療の発展によって、日本では慢性腎臓病の進行を遅らせ、透析療法の開始年齢は遅らせることは実現され始めています。一方で、年間の国内透析導入患者数は減少に転じていません。ひとつは社会全体の高齢化が原因です。高齢者の3人に1人ほどが慢性腎臓病を罹患するという背景もあり、高齢化社会の中で慢性腎臓病は極めて重要な疾患となっています。その中で、最たる加齢性疾患であるサルコペニアや骨粗鬆症は生活の質と同時に寿命にも影響し、筋肉と骨、慢性腎臓病は深い結びつきがあります。実際今回の観察開始点で筋量と骨量は相関し、腎機能の低下は両者の低下と関連しました。これまで骨と腎、筋と腎の個別の影響を調査した研究はあっても統合的な評価はされていない現状に気が付きました。本研究の結果から、サルコペニアや骨粗鬆症以上にオステオサルコペニアに研究の目を向けることで、腎臓病治療を新たな展開に導けることを期待しています。

(市立青梅総合医療センター腎臓内科・中野雄太先生 / 東京医科歯科大学腎臓内科学分野・萬代 新太郎)